半崎くんと笹森くん
隣の席の別役太一は、どうやらドジっ子らしい。
教科書落としたり、筆入れの中身ばらまいたりして、被害者である前の席の男子は涙目だ。

「悪気がないから嫌えないよね」
「じゃあ、避難してくんな」

自席を離れて半崎くんの席に近付くと、「ダルい…」と言いながら机に突っ伏した。いやだって、さっき、シャーペン飛んできた。

「半崎くん…」
「寝てる」
「起きてる!起きてるよ!」
「ねーてーるー」

俯く半崎くんの体を揺らしていると「どうしたの?」と声が掛けられた。聞き慣れない声にピタリと動きを止めて顔を上げると、頬にそばかすのある男の子がすぐ近くに立っていた。

「あ……」
「半崎寝てるの?」
「笹森、構わなくていいから…」

顔を上げた半崎くんにじとりと睨まれた彼は、机の横にしゃがみこんだ私に苦笑した顔を向けた。あれ……見覚えある……。

「……もしかしてオレのこと分からないかな」
「五月、人の顔覚えないから」
「半崎くんのこと覚えてなかったことまだ根に持ってるの………?」
「そうなのか?」
「違うから!」
「そうだ五月さん、半崎と話すならオレの席座っていいよ」

そう言って半崎くんの前の席を指差したクラスメイトに黙って頷く。半崎くんと席近いから見覚えあったのかな………。

「今日は午後から防衛任務でいないから好きに使って」
「そういうこと言わなくていい…」

席に座って、次の授業の準備を始めた笹森くんの背中を首を傾げて見つめていると、「五月も席戻りなよ」と半崎くんは追い払うように手を振った。

「うーん…?」
「だから戻れって……」
「あ」
「なに…」
「ひさとだ!」

うん、そうだ思い出した。ぽん、と手を叩いて一人で頷いていると、目の前から「はぁ?」と訝しげな声が発せられた。ペンが床に落ちる音がしたけど、またべつやくんかな。

「え……すわ隊の人でしょ?」
「合ってるけど………え、なんで名前」
「すわ隊の人にそう呼ばれてたよね……?」
「………そうだな」
「へ?」
「笹森」

半崎くんが声を掛けた方を見ると、床に手を伸ばした笹森くんがビクリと肩を揺らした。………あ、ボールペン。

「えっと……ごめんなさい思い出しました。すわ隊の笹森くん…」
「そっか……よかっ…た!」

ボールペンを拾った笹森くんは、そう言って眉を下げて笑った。
名前で呼ばれてて……仲良いなぁって思ったんだよ。


「………なに赤くなってんだ」
「はっ……」
「?」

(20160503)

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