荒船先輩と勉強
「先輩!先輩!荒船せんぱいー!」

夏休みの登校日を終えたその足でボーダー本部へ向かった私は、荒船先輩と話している人の顔を見ずに目の前を歩くその背中へと飛びついた。作戦室が近かったため、よく考えもせずに荒船先輩と一緒にいるのはほかり先輩だと思い込んでいた私は、相手の顔を見てびしりと固まった。

「突然飛びかかって来るんじゃねぇ」
「………すみません」

話し相手にも小さく会釈して、先輩の後ろに隠れる。びっくりした。カゲ先輩か。

「……何隠れてんだ」
「あ、いえ、話の邪魔してすみません」

カゲ先輩とはあまり話したことがないからまだ慣れない。荒船先輩の後ろから「お久しぶりです」と言うと「おー」と短く返事が返された。挨拶するとちゃんと返してくれるから悪い人ではないと思うんだけど………目付きがね、恐いよね。

「五月はこれから作戦室行くのか?」
「はい。勉強教えて下さい!」

後ろから先輩の体を揺らしながら言うと「分かったから揺らすな」と頭を叩かれた。

「すみませんカゲ先輩、うちの隊長借りてもいいですか?」
「少し話してただけだから構わねえよ。じゃあな荒船」
「おう。またな」

背中を向けたカゲ先輩にこっそり手を振って、歩き出した先輩に駆け寄る。

「何の勉強だ?」
「数学教えてほしいです」
「わかった。……そういや半崎と一緒に来なかったのか?」
「あ!………置いてきちゃいました」

本部に入るまで一緒にいたのに、そういえば着いてきてないな。たぶん「ダルイ」と言ってのろのろ歩いてるんだろうな。うん、よくあることだね。

「………お前走ってきたのか」
「なんで分かったんですか」
「基地内で走るなって言っただろうが」
「あ、いえ走ってないです」
「おい、さっき認めてただろ」
「うわあ、すみません。……いたいいたい」

女子にも容赦なくヘッドロックとか酷いと思います。頭もげる。
追い付いた半崎くんがその様子を見て「五月今度は何したの?」と呆れたように言った。
もう、半崎くんが着いてこなかったせいだよ!


(それでドコが解らないんだ)
(ココとココとコレとこの辺全部です)
(ほぼ解ってないじゃん)
(ちゃんと聞いてるか?授業)
(失礼な。私はマジメです)
(ノートとってから言え)

20151219

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