荒船哲次と新メンバー A
どこかですれ違っただけだろうか。あり得るが…違う気がする。
翌日、四人で集まった際、何気なくその話題を出すと、加賀美は「もしかして」と口を開いた。

「攻撃手?」
「そう。あの子、元々は攻撃手だったのよね」
「個人ランク戦で戦ったことがあるとかじゃないすか?」
「うーん…C級のときだし違うと思うけど」
「五月が入隊したときは、もうB級だよな。荒船」
「そうだな」

正隊員になってからは、訓練生と戦ったことはないからその可能性はない。でもそうか……C級の攻撃手か。白い隊服と五月の姿を重ねて「あ」と思わず声が出た。戦ったことはないが、試合を観たことはある。ふいに思い出した。「弧月使ってたか?」と聞くと肯定が返って来た。間違いない。

「何度かランク戦を観たことがあるな」
「思い出したのか」
「ああ。すっきりした」

思い出せそうで思い出せない感覚がむず痒かったのだが、これでやっと話が進められる。
彼女は、いつも負けていた。けれど、挑戦することをやめたりせず、挑み続ける姿には好感を持てた。最近見かけなかったから忘れていたが、狙撃手になっていたのか。……負け続けていたのが今も自信が持てない理由だろうか。

「荒船くん、ありがとね」
「まだ五月が断るかもしれねぇぞ」
「大丈夫だと思うの」
「イトコがいるからか?」
「それもあるけど……うん、そうね。荒船くんなら大丈夫だと思うの。泣くかもしれないけど」
「おい、どういう意味だ」
「泣くんすね」
「泣かすのか。荒船」
「泣かすかよ」

「少し泣き虫なのよね」と言った加賀美に眉を潜める。
ちなみに集合してすぐに新メンバーについて話したが、五月晶を部隊に加えることを穂刈と半崎はあっさり受け入れた。

数日後、ラウンジで会った五月は、想像よりおどおどした態度で、俺に怯えるような素振りを見せた。正直、そんな性格でボーダーでやっていけるのかと不安になった。

だが、俺の手をとった五月の目には、確かに強い決意が浮かんでいた。

(20160107)

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