荒船哲次と新メンバー
※「荒船隊」の前

隊を組むメンバーも決まり提出する申請書を記入していると、オペレーターである加賀美が「ちょっといいかしら」と言って目の前に座った。

「どうした」
「部隊に入れて欲しい子がいて」

眉を下げてそう言った加賀美にペンを持つ手を止める。何度も話し合って、あとはもう申請するだけだというのに急にどうしたのだろうか。どんな奴かと聞くと、B級になったばかりの狙撃手だという。うちにはもう狙撃手が二人いるし、一人増やせばその分加賀美の負担も大きくなる。それは加賀美も分かっているはずだ。それでも、こうして言って来た。

「加賀美の知り合いか?」
「イトコなんだけど……ちょっと心配なのよね」

本当は口出す気なかったんだけど。とため息を吐いた加賀美は、テーブルの上に一枚の書類を置いた。

「これは…」
「晶の今日までの合同訓練の結果」

五月晶という加賀美のイトコの約一ヶ月分の記録にさっと目を通す。訓練の結果は良好だが……何が心配なんだ?


加賀美に促されて、狙撃練習中の五月晶を離れた場所から見に行った。話しかけてみようかとも思ったが、「うちの隊に入りなよ」と声を掛けられた五月を見て、静かに訓練場から出た。

「荒船くん、どうだった?」
「どうだったって……さっき別の奴に誘われてただろ」
「たぶん入らないわよ?あの子他にも何人かに誘われたことあるけど、全部断っているのよね」
「部隊に所属する気ないんじゃないか?」
「うーん……そういうわけじゃないと思うけど」

B級隊員の中には、部隊に所属せずに防衛任務のみを行う者もいる。加賀美が入れたいと思っても、本人の意志がなければうちの隊に入れることは出来ない。

「あの子、さっきなんて断ったか聞いた?」
「いや…」
「弱いから迷惑掛けます。だって」
「なんだそれは…」
「自分に自信がないのよ。私はオペレーターだけど、あっという間にB級へ上がったあの子の狙撃の腕がいいのは分かるわ。……私はもっとあの子に自信を持って欲しいの。そのためには、部隊に入ったほうがいいと思ってる。……無理にとは言わないけど、出来ればうちの隊に入れたい」

困ったように笑った加賀美にさてどうするかと思考を巡らせる。さっき見たかぎりじゃ真剣に的に向かっていたし……加賀美が言うにはかなり練習熱心らしい。射撃の腕も申し分ない。あとは本人と他のメンバーの了承が得られれば、加賀美の頼みを叶えることはできる。

「穂刈と半崎に話してみるか」
「いいの!?」
「加賀美のイトコだからって甘やかしたりしねぇぞ」
「もちろんよ!厳しくしてあげて!」
「…それもどうなんだ」

加賀美と別れ、明日にでも穂刈と半崎に話してみるかとさっそくメールを作成する。

そういえば、加賀美のイトコ……なんか見覚えがあるんだよな。

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