佐鳥賢と元クラスメイト
※佐鳥くんと私Aの後
五月さんって、もっとクールな人だと思ってた。
手元のイーグレットを興味深く観察している五月さんにそう言うと、ぎょっとしたように顔を上げた。
「は?……クール?」
「あんまり笑ってるの見たことないからさー」
「ああ、根暗ってことね」
「なんで言い換えたの!?」
「クールって言い方……なんかかっこいいじゃない」
ちょっと意味がわからない。自分は根暗で十分とか言い出したんだけど……五月さんネガティブすぎだ。
「五月さんはクールで大人しいだけだよ!」
「物は言い様だよね」
「クールではなかったけど!」
「なんでそう思ったのか不思議」
首を傾げて佐鳥を見上げる五月さんと目が合って、ドキリとする。そういえば、学校で話しかけても目が合ったことないなぁ。佐鳥が話しかけても一言二言でどこかに行くんだよね。先生とか他のクラスメイト(女子)には普通に話してたのに。あれ?もしかして佐鳥嫌われてる?初めて基地で会ったとき、嫌そうな顔してた気がする。いやいやでも今は普通に話してくれるし!狙撃手なってくれたし!
「私、佐鳥くんと話すの少し苦手だったから……そのせいかな」
「ええええ」
五月さんの言葉に頭を抱えて項垂れる。なんかショックだ。
「ええと…話しかけてくれるのは嬉しかったんだよ?」
「………でも苦手だったんだよね」
「あ」
おろおろと視線を泳がせる五月さんは、何を言おうか迷っているようだった。あ、涙出てきた。
「話しかけてもらっても……私は上手く話せないから苦手だった」
困ったように笑う五月さんに、もしかしていつも困らせていたのかと不安になった。五月さんと仲良くなりたくて、何度も話しかけていたけれど、迷惑だったのだろうか。
「私と話しても楽しくないでしょ?」
「佐鳥は五月さんと話せるだけで嬉しいよ!」
五月さんがボーダーに入隊したと同時に話しかける話題ができたと嬉しかった。狙撃手にさそったのだって、悩んでいるのをどうにかしたいという思いもあったけれど、正直仲良くなりたいという下心のほうが大きかった。佐鳥くんは優しいなぁと言う五月さんに「そんなことない」と首を横に振る。謙遜とかじゃなくて!ほんとに!
「佐鳥くん、ありがと」
ふわりと笑った五月さんに頬が熱くなった。
(20160102)
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