狙撃手合同訓練
「あれ?………ちょっと人数増えた?」
通常狙撃訓練終了後、全体の人数が前より増えている気がしてそう言うと「こないだ入隊日だったからだろ」と半崎くんは呆れたようにため息を吐いた。そういえばそうだった。
「狙撃手も増えたねぇ」
自分より年下の子達が増えるのは大歓迎だ。モニターを覗き込む半崎くんの背中に寄り掛かって訓練場を見渡していると、後輩を指導する姿が所々で見られた。あれ、女の子と話しているの奈良坂先輩じゃないですか。女の子の後輩とか羨ましい。
「五月、重い」
「うーん…」
「なに」
「どうすれば後輩に慕われる先輩になれるだろうか」
「まず乗り掛かってくるのやめろ」
「先輩!って呼ばれたい」
「…そもそも五月と話してくれる後輩いないだろ」
「いるよ!」
失礼だなと最近知り合った後輩の姿を捜すと、彼はちょうど訓練場の出入口のまえでこちらを見ていた。
「ユズルくーん」
少し遠いが名前を呼びながら手を振ると、伝わったのかユズルくんは控えめに手を振り返してくれた。見た?半崎くん今の見た?
軽くお辞儀をして訓練場を出て行ったユズルくんを見送って体の向きを戻すと、半崎くんは「あれ誰?」と眉を潜めた。ふふん私に後輩がいて悔しいんでしょ。
「ユズルくん、鳩原先輩の弟子なんだって」
「二宮隊の?」
「うん!鳩原先輩すごいよねぇ」
「知り合いだったんだ」
「こないだユズルくんと一緒にいて、初めて話した」
「ちゃんと話せたの?」
「ユズルくんが一緒にいたから」
「………………へー」
「ジュース買おうとしたら財布忘れて」
「は?」
「鳩原先輩が貸してくれたの。優しい」
「忘れたなら買うのやめなよ」
「ユズルくんも初めて会ったとき10円貸してくれたんだー」
「いや、何してんの」
じとりとした目で見てくる半崎くんに「ちゃんと返したよ!?」と言うと、本日二度目のため息が吐かれた。
「五月は………ばかだよな」
「もう!帽子取ってやる!」
「意味わかんない」
「後輩可愛いって思うでしょ!」
「あーはいはい」
「半崎くん……後輩とふれあいたくないの」
ムッとして外した帽子で頭を叩くが、痛がる様子はない。そりゃそうだトリオン体だもん。今日の成績負けたので半分八つ当たりだ。
「だる……オレは五月で手一杯だからしなくていい」
「なんでよー」
ぺしぺしと帽子で頭を叩いていると、他の人と話していたほかり先輩が「何やってんだお前ら」と不思議そうな顔をして戻って来た。手を止めてほかり先輩の後ろにいる人影から目を逸らすと、「楽しそうだなー」と声を掛けられた。見えてない!リーゼントなんて私は見えてない!
(こう見えて恐くないぞ。当真は)
(すげぇ震えてるんだけど)
(……………)
(五月ー、そろそろ慣れようぜ)
(……………)
(うわ、泣きそう)
20160402
当真さんは苦手。リーゼントと高身長なせいだと思われる。
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