B級ランク戦
スコープ越しに荒船先輩と対峙する対戦相手の姿を確認する。「焦らないで」と言う倫ちゃんに頷いて、先輩と向かい合う姿に狙いを定めた。相手は、二人だ。トリオン供給機関を狙った一発目は避けられたが、一人の片腕は落とした。畳み掛けるように斬り込んだ荒船先輩が一人倒したのを視認して、私はバッグワームを翻した。
荒船先輩の方には、ほかり先輩が着くから大丈夫だ。こちらに向かってくる反応をレーダーで確認して、建物の隙間を駆けて行く。
(……思ったより早いな)
拓けた場所で、待ち受けるように私に弧月を向けた敵チームの姿に顔が歪む。半崎くんとの合流地点まで釣るつもりだったんだけど…間に合わないなぁ。
『戦闘体活動限界―――緊急脱出(ベイルアウト)』
三つ巴だった今シーズン最後の試合が終わり、私達の初めてのランク戦は、B級中位で幕を閉じた。
「荒船せんぱーい」
換装を解いた荒船先輩に抱き着いて、お腹にぐりぐりと頭を押し付ける。ぼそりと「うざい」という声が聞こえたけど、気にせずしがみついた。最後のランク戦に勝利してテンション高いです。すみません。
「お疲れ様」と言葉を掛け合う先輩達の声を聞きながら、試合を思い出す。今日も私は一点も取れなかったけど、荒船先輩が点を取るのをフォローできたので、とりあえず満足です。…………できれば私ももう少し一緒に戦いたかったけど。
「五月」
乱暴に頭を撫でた手に顔を上げる。「よくやったな」とニヤリと笑った荒船先輩に目を丸くすると、頭を軽く小突かれた。
「なに驚いてんだよ」
「私、一点も取れなかったんですよ?」
「でもお前のお陰で一点取れた」
「サンキューな」と言った荒船先輩から手を離して、緩みそうになる頬を押さえる。
褒められた………嬉しい。自分のダメなところばかり気にしてたけど、私でも役に立つんだ。
「えへへ」
嬉しくて笑い声が零れた私の頭に今度は優しい手が置かれた。
(20160301)
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