半崎くんとお昼寝 A
デスクの上に置きっぱなしのスマホが音を立てて振動した。マナーモードでも、バイブレーションの振動は硬いデスクの上でよく響く。隣の部屋で荒船先輩と話している倫ちゃんが戻ってくる様子はない。収まらない振動に画面を確認すると、メールではなく電話が掛かってきていた。
持ってったほうがいいかな。
デスクの上からスマホを取って立ち上がると、しつこく鳴っていた着信は途切れた。着信画面から待ち受け画面へと切り替わったのに気付いて、ちょっと遅かったなと電話相手に謝罪する。急用だったらごめんなさい。

「…って、あれ?」

待ち受けに表示されているのは、よく知る二人の人物の写真だ。というか一人私だし何これいつの写真。

「晶どうしたの?」
「倫ちゃん…電話掛かってきたよ」
「んー?あホントだ。ちょっとかけ直すね」
「向こうで待ってる」
「ごめんね」

邪魔にならないよう隣の部屋に行くと、ハンモックの上で眠る半崎くんの姿が目に入った。さっき作戦室に来たばかりなのにもう寝てるよ。寝顔を見ながらため息を吐くと、荒船先輩は訝しげに眉を潜めた。

「半崎起こすか?」
「いえ…大丈夫です」

ハンモックで思い出したけど、こないだ半崎くんと一緒に寝たな私。……いやでも、あのとき倫ちゃんいなかったし。

「先輩は何してるんですか?」
「次の対戦相手のログ見てた。纏めとくから後でお前も見ろよ」
「はーい」

「暇なら勉強でもしてろ」と言う荒船先輩の言葉は無視してブランケットで体を包む。防衛任務までまだ時間があるので、ちょっと私も寝ようかなぁと思っていると、課題を解いていたほかり先輩が顔を上げた。

「五月もハンモックで寝ればいい」
「あれ?こないだも同じこと言われたような…」

デジャヴってやつかなと首を傾げていると、電話を終えた倫ちゃんが部屋へ入ってきた。

「なんの話?」
「寝るならハンモックで寝ろって話だ。こないだみたいにな」
「こないだ……ああ!いいと思うよ!」

ハンモックで眠る半崎くんを視界に留めた倫ちゃんは、キラキラと目を輝かしてそう言った。え?なんで嬉しそうなの?

「そういえば加賀美喜んでたな」
「撮った甲斐があったな。あのときは」
「待ち受けにしたの!」
「マジか」

スマホの画面を向ける倫ちゃんにハッとして、「その写メどうしたの!?」と画面を指さした。

「これ?穂刈くんが送ってくれたの」
「俺のところにも来たぞ」

画面に写る半崎くんと私が眠る姿に手で顔を覆う。荒船先輩も貰った写メ出さなくていいから!撮られたときは気にならなかったけど………恥ずかしい!

「二人とも可愛いよね」
「そうだな。可愛い」
「やめて下さい」

倫ちゃんとほかり先輩の言葉を聞いていられなくて、先輩達に背中を向けて体を丸めた。半崎くんのバカ!なんで私だけ恥ずかしい思いしてるの!寝ている半崎くんのお腹を八つ当たり気味に叩くと、小さく呻き声が聞こえた。クスクス笑っている倫ちゃんに「後で起こして」と頼んでから、立てた膝に顔を埋めた。



体を揺さぶられて目を開けると、顔を歪めた半崎くんと間近で目が合った。そのまま固まっていると、半崎くんは「重い」とぼそりと呟く。
なんで私…半崎くんのお腹枕にしてるんだ。


(……ごめん)
(なんでこここで寝てんの)
(なんでだろう?)
(?)

(やっぱり可愛いわー)
(おい、防衛任務行くぞ)

20160207

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