佐鳥くんと時枝くん
「時枝くん!」

ラウンジで見付けた丸い頭に声を掛けると、眠そうな目が私を捉えた。向かい側に座って「佐鳥くんは?」と訊ねると、作戦室に忘れ物を取りに言ったとの答えが帰ってきた。
今日は、佐鳥くんと時枝くんと一緒に昼食を食べる約束をしているのだ。さっきまで私は防衛任務に出ていて、二人は午前中に部隊ミーティングがあったという。「お疲れ様」と労いの言葉を掛けてくれた時枝くんに頬を緩めて笑みを返す。今日は私、一体も倒してないけど。
時枝くんは、嵐山隊の万能手だ。佐鳥くんに紹介されてから話すようになったのだが、優しくて気が利いて、同い年とは思えない安心感があって、一緒にいると落ち着く。隊長の嵐山さんもオペレーターの綾辻さんも優しいし……嵐山隊みんないいひと…すき。

「何食べるか決めた?」
「今すごくオムライス食べたい気分。防衛任務のとき、半崎くんとオムライス食べたいなって話してたんだー!」
「へぇ…オレは何にしようかな」

会話の内容が昼食のメニューの話から時枝くんが飼っている猫の話に移った頃、「お待たせー!」と言ってやって来た佐鳥くんが私の隣に座った。なぜこっちに座ったのか。

「財布作戦室にあってよかったー」
「よかったね」
「え、財布忘れたの?バカなの?」
「…………五月さん最近オレに厳しいよね」
「そんなことない」
「じゃあ、賢も来たことだしオレ達はご飯買ってこ来ようか」
「そうだね」
「オレは!?」
「荷物番よろしくー」
「ひとり寂しい!」

泣きそうな顔をした佐鳥くんに時枝くんと顔を見合わせて笑った。


私と時枝くんのトレーを見て、佐鳥くんも「オムライス食べたくなった!」と言ったため、テーブルの上には3つのオムライスが並んだ。
ふわふわの卵に口が緩む。美味しい。

「そういえば、半崎は来なかったんだね。五月さん誘うかと思ったんだけど」
「ん?なんか眠いって言って断られた」
「あ、一応誘ったんだ」
「オムライス食べたいって話してたって言ってたね」
「うん。半崎くんはオムライスより寝ることを取りました。あとでオムライスおいしかったよって言ってやろうと思います」
「あはは、そうしなよ」

今頃作戦室のハンモックでぐーすか寝ているであろう半崎くんを思い出して、くすりと笑う。

「五月さんと半崎って仲良いよね。羨ましい」
「んー…同じ隊で同い年だから話しやすいかな。っていうか羨ましいって何」
「オレは五月さんと打ち解けるの時間かかったのに……半崎やとっきーとはすぐに仲良くなったよね」

そう言って口を尖らせる佐鳥くんに思わず吹き出した。

「なに拗ねてるの」
「拗ねてないしー」
「佐鳥くんはボーダーで出来た最初の友達だよ」

にこりと笑ってそう言うと、少し照れたように頬が赤くなった。「それに賢がいなかったら、オレと五月さん仲良くなれなかったと思うよ」という時枝くんのフォローで畳み掛けると、佐鳥くんの機嫌は元に戻って顔にはいつもの笑みが浮かんだ。

「高校は一緒のとこ受けるし…二人共学校でも仲良くしてね」

改めて言葉にすると、すごく照れる。でも、今日はこれを伝えたくて、二人を食事に誘ったのだ。

私の大好きな友人たちへ。

(20160126)

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