ボーダーと私
「五月!」

狙撃場へ向かう途中、後ろから声を掛けられた。バタバタと駆け寄ってくる佐鳥を足を止めて出迎えると、「本部で会うの久しぶりだね!」と輝かしい笑顔を向けられた。

「嵐山隊忙しそうだね」
「新規入隊が毎月になったからね…」

今日もやることいっぱいだよーと苦笑いを浮かべた佐鳥に鞄から取り出したお菓子を手渡す。

「五月がチョコをオレにくれるなんて…感激」
「どういう意味かな」

いくら好物でも私だって他人にあげることはある。食い意地がはってると思われてたのだろうか。だって……疲れているときには甘いものって聞いたから。

「がんばってね」
「ありがとう五月!じゃあ、オレ行くね!」

急いでいたのか会話を早々に切り上げた佐鳥は、「そういえば」と動きかけていた足をぴたりと止めた。

「今度!がんばろうね!」

一瞬何のことかと思ったが、昨日ミーティングで聞いた任務のことか。秘密の任務のため、大っぴらに話すことはできないんだ。

「うん!」

手を振って佐鳥を見送った後、私も目的地へと足を進める。

また近界民が攻めてくるかもしれない………でも、それを聞いたとき不思議と前回よりも不安は少なかった。
誰が来ても…私達ボーダーがやることは変わらない。街の人達を守るために戦うんだ。

がんばろう。

今日も、この場所で。

昔私が助けてもらったように……私も誰かの助けになれたらいい。


(20170704)
サイレントブルー完結


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