大規模侵攻D
「おつかれ」
「奥寺くん…おつかれさま」

人型近界民との戦いが終わり、C級の援護へ向かうA級三人を見送る東さんと荒船先輩の後ろで同級生の彼と言葉を交わす。まだ侵攻が止まったわけではないけれど、ひとまずおつかれさまだ。

「オレ達も防衛に戻ろう」
「うん!」

一息着く暇もなく、本来の目的である防衛へと戻るため、私も走り出した奥寺くんの後に続く。荒船先輩…片腕なかったな。撃ちづらそうだと思いながら自身の両手に目を向ける。もしも荒船先輩が緊急脱出したとしても…動ける限り私は防衛を続けなければいけない。南部の市街地に近界民が入ったとの報告に倫ちゃんに指示された狙撃ポイントへと急いで足を進める。
ただ必死になって、C級に襲いかかろうとした新型や市街地に向かう見慣れたモールモッドにトリオンの銃弾を撃ち込んだ。

近界民が撤退し、残敵を一掃してようやく防衛戦は終わったのだ。

「五月、市民の救助に向かうぞ」
「片手だけど大丈夫ですか!?」
「トリオン体なめんな」

B級合同は散らばって崩れた瓦礫に閉じ込められた人、怪我をした人の救助をひたすら続けた。片腕をなくした荒船先輩は途中からトリオン体を解除して救助活動にあたっていた。荒船先輩…生身も鍛えてますもんね。

「いった…」
「大丈夫ですか?もう少し我慢して下さいね」
「ええ…」

足を怪我した女性に肩を貸して、救護班の元へ向かう。反対側で心配そうに女性の手を握る男の子に「もう少しだよ」と声を掛けると、彼は少しほっとしたように頬を緩めた。二人を送り届けてまだ終わっていない救助活動に戻ろうとした私に、男の子は笑って手を振った。

「お姉さんありがとう!」

幼い笑顔に…泣きそうになった。


後日、C級が32人も拐われたと聞いた私は、その中に夏目ちゃん達が含まれていなかったことに人知れずほっとした。知られたら、記者会見で責められていた彼のように私も誰かに責められるのだろう。

私は、いつまで経っても強くなれない。


(20170627)
大規模侵攻終結

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