大規模侵攻C
「火力差が大きい。無理に攻撃するなよ」

東さんの言葉に緊張から冷や汗をかく。体を動かしたことで、震えは落ち着いてきていた。
荒船先輩と別れた後、私も東さん達と同じく離れた場所から堂々と歩く人型近界民を警戒する。C級隊員を連れたとりまる君達を援護するよう忍田本部長から指示があったが、この状況じゃそちらには行けない。……顔見知りの後輩達は無事なんだろうか。心配だが、今は確かめる術はない。目の前のことに集中しようと、無意識にイーグレットを抱える腕に力が入る。さっきみたいな失敗はもう嫌だ。

『力みすぎるなよ五月』
「ほかり先輩…」

作戦室で倫ちゃんと一緒にモニターを観ているであろうほかり先輩に話し掛けられ、ふっと肩の力が抜けた。警戒を怠らないよう移動しつつ、ほかり先輩の声に耳を傾ける。

『さっき緊急脱出して戻ったとき、五月が撃たなくてよかったって思った』
「え…」

恐怖に負けたことを肯定してほしくない。私は、強くありたい。

『自分が駄目な奴だと落ち込むのはまだ早いぞ』
「駄目な奴ですよ」
『まだ戦えるだろ…五月は』

緊急脱出した自分達はもう戦えないのだと言外に告げたほかり先輩に自身を卑下する言葉を飲み込む。

『オレ達の分も頼んだぞ』

終わっていない戦いの中で、余計なことを考えてる私はそれこそ駄目な奴だ。終わったら荒船先輩にいっぱい怒ってもらおう。
ほかり先輩の言葉に頷いてから、大きく深呼吸して一旦心を落ち着かせる。人型近界民を放置するわけにもいかないから…この膠着状態も長くは続かないだろう。そう考えていると、A級三人から「角付きと戦る」と東さんに声が掛けられた。

この戦局に、決着が着く。

(20170627)

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