大規模侵攻
サイレンが、鳴った。

無数に出現した門に緊張感が漂う中、忍田本部長の号令が力強く響く。
私たち荒船隊も近くのトリオン兵を排除しながら指示されたポイントで他の部隊と合流することになった。

「五月、一人で突っ走るなよ」
「大丈夫です」

移動しながら真剣な表情でそう言った荒船先輩に頷くと、緊張でガチガチに固まった背中をバシンと叩かれる。大丈夫……みんないるんだから。先日の鋼さんとのやり取りを思い出して、ぐっと唇を噛む。

『もう少し進むとトリオン兵がいるから気を付けて!』

倫ちゃんの声が無線から聞こえる度にトリオン兵に向かってイーグレットの引き金を引いた。
順調に足を進める中、続々と他の部隊の『現着』の報告が耳に入ってくる。早く合流しなくちゃ。そう気を引き締めるが、遠くから聞こえる建物の崩壊音にどうしても四年前の記憶が重なってしまい、振り払うように首を振る。四年前に被害にあったのは私だけじゃないんだから!
破壊されたトリオン兵の残骸を見下ろしながら、荒船先輩が倫ちゃんに次の目標を確認しているのを聞いていると、突然の東さんから通信が入った。

「新型のトリオン兵?」

未知の存在に体が震えた。隊員を捕らえようとするって……なにそれ。忍田本部長よりB級は全員合流してそれぞれの地区を一ヶ所ずつ回ることとなった。

「俺達も東さんのところへ向かうぞ」
「了解」

新型のトリオン兵が怖いけれど、警戒区域外まで進ませるわけにはいかなかい。……ボーダーに入るとき決めたじゃない。もう四年前みたいなこと起こさせないって。あの、地獄みたいな光景を見たくないって。

震えるな、私。


(20170621)

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