狙撃手合同訓練E
いないなぁ…。
きょろきょろと狙撃場の中を見回していると、隣にいる半崎くんに不審な目を向けられた。
「五月何してんの」
「夏目ちゃんと雨取ちゃん探してる」
「誰……訓練始まるけど」
「こないだ入ったC級だよ」と言うと、半崎くんは興味なさげに頷いて隣のほかり先輩に話し掛けた。今日は先輩達も一緒なのだ。半崎くんとは反対側で訓練開始を待つ佐鳥は、「あの子達気に入ったんだね」と私の顔を覗き込んだ。それはそうですとも。ちなみに入隊指導の後、夏目ちゃんが雨取ちゃんを連れてきてくれたから今期の狙撃手女子はコンプリートだ。どや。
「今日は勝負する?」
「しない!」
「うわぁ…めちゃ笑顔だ。機嫌いいね」
「佐鳥なんで隣にいるの?」
「今さら!?」
ショックを受けた顔をする佐鳥に眉を下げる。佐鳥いつ来たっけ?
「佐鳥放っておけよ…今何言っても聞いてないから」
「えっ…そんなことないよね!?」
「終わったら探しに行こうかな」
「………」
「ほらな」
私を挟んで半崎くんと佐鳥が何か話している。まぁいいや。
しばらくすると訓練開始の合図が聞こえ、浮かれていた気持ちを切り替える。
的だけを見る。
***
「終わった!ちょっと行ってくる!先戻ってていいです!」
結果も確認せずにイーグレットを消して、夏目ちゃんと雨取ちゃんを探しにその場を離れる。「なんでたまに行動的になるんだ」「……オレも後輩だったらよかった」「後輩ジュース買ってきて」「パシリ!?」後ろから聞こえる二人の声は動き出した人混みに入るとすぐに聞こえなくなった。早く見つけないと狙撃場出て行っちゃう。
「あっ!いた!」
雨取ちゃんの頭を両手でぐりぐりする夏目ちゃんの姿を見つけて、思わず口を手で覆う。やだ可愛い。
「一位はナラサカ……さん?げっ満点!?バケモンだこりゃ」
画面を覗き込む二人に後ろからおずおずと近付くと、夏目ちゃんのそんな声が聞こえてきた。うん、やっぱり奈良坂先輩一位だよね。
「狙撃手ランク二位の人だよ」
二人の間から私も全体の結果が表示された画面に目を向ける。私は………まあまあの結果かな。
「五月先輩!?」
「おつかれさま」
驚いた後輩達ににこりと笑みを向けると、それぞれから「おつかれさまです」との声が掛けられる。
「奈良坂先輩はすごいよ」
「五月先輩もすごいじゃないですか!」
「すごくないよ」
入りたてのこの子達には、私もすごく見えるのだろうか。そう思うと少し自信が持てて、いつだって心の奥で燻っている劣等感が鳴りを潜める。
「二人がB級に上がってくるの楽しみ」
白い隊服に目を細めて二人の頭を撫でると、可愛い後輩達は恥ずかしそうに笑った。
(20170519)
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