ボーダー正式入隊日A
「ほんとうにごめんなさい」

顔を青くして土下座した女の子に対して、佐鳥も混乱したように土下座を返した。佐鳥と東さんがその子と話しているのを他のC級隊員の子達の側で眺める。玉狛支部の雨取千佳ちゃんというらしい。そんなに謝らなくても責任は佐鳥が取るから大丈夫だよ。新しく出来た小さくて可愛い後輩とどうしたら絡めるかと悩んでいると、鬼怒田さんの大声が狙撃場に響いた。ひっ…こわい…。
思わずそろそろと後退りすると、「うわっ」との声と同時に背中に衝撃が当たった。

「えっ…わわっ…ごめん」

びっくりした表情で私を見る猫目の女の子にやってしまったと血の気が下がった。

「大丈夫ですよー」
「け、怪我してない?」
「これぐらいで怪我なんてしないっすよ!トリオン体だし!」
「そうだよね……でも…ごめんね」
「何回謝るんすか」

可笑しそうに声を上げて笑ったその子にほっと息を吐く。……いい子だ。

「先輩も壁に穴開けたりできるんすか?」
「できないよ!?」
「ふーん…あのこどうやって撃ったんだろ?」

そう言って動かされた視線を追うと、鬼怒田さんが雨取ちゃんの頭を撫でていて困惑した。……鬼怒田さんってあんなだったっけ?本物?

「なんか怖い」
「おい、鬼怒田さんに聞こえるぞ」
「荒船先輩……あの人本物ですか?」
「何言ってんだ」

近くにいた荒船先輩に呆れたような目を向けられて、目の前の光景に顔を戻すが…やっぱりさっきとは違う怖さがある。上層部は怖いイメージがあるからかな?

雨取ちゃんのチームメイトらしい二人も来て、鬼怒田さんが出ていった後には雨取ちゃんと一緒に入隊指導を受けた後輩達がわっと彼女に群がった。微笑ましい光景だ。後輩可愛い。

「あっそうだ!先輩ー」

目を細めて後輩達を見ていると、さっき少し話した猫目の子がこちらに駆け寄って来るのに気付いた。えっ…えっ……どうしよう。おろおろと荒船先輩に助けを求めると、「行ってこい」と背中を叩かれた。
緊張しながら足を動かすと、人懐っこい笑顔が向けられる。

「先輩の名前聞いてなかったと思って!アタシは夏目出穂っす!」
「私は…五月晶」
「五月先輩っすね」

女の先輩いてよかったと言った夏目ちゃんに私も心の中で「女の子の後輩いてよかった」と頷く。
雨取ちゃんは玉狛支部だけど、夏目ちゃんは本部所属みたいだからまたいつでも会えるだろう。

「がんばってね」

この子も他の子達も……狙撃手でいることを好きになってくれたら嬉しい。


(可愛い後輩できました!)

20170509

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