大掃除!
今シーズンのB級ランク戦も終わり、今年も残り少なくなった頃…荒船先輩のとある宣言に私達は顔を青くした。

ぎゅっと抱えたものを強く抱き締めると、「いい加減にしろ」と荒船先輩は呆れたように私を睨んだ。

「荒船、可哀想だ睨むな」
「我が儘なのが悪い」
「でも!だって…」

ダンベルを持ちながら庇うよう立ち上がったほかり先輩の後ろに隠れると、荒船先輩の目付きは更に鋭くなる。ひっ…こわい。

「い、嫌です!なんでこんなことするんですか!」
「五月」
「睨まないで下さい!いいって言ってもらえるまで離しませんからね!」
「泣くな五月、荒船の気持ちも分かってやれ」
「ほかり先輩…」
「オレも辛いが…耐える」
「ほ、ほかり先輩!」

先輩が我慢してるのに…後輩の私が我が儘言うなんて…。口元を手のひらで隠して肩を震わせて耐えるほかり先輩を見て、おずおずと背中から顔を出して荒船先輩に視線を向ける。何故かなんとも言いがたい表情をしている荒船先輩に内心首を傾げながら、抱き締めていたハンモックをそっと差し出した。

「すみません…荒船先輩もスクリーンプロジェクター片付けるのに…」
「…………ああ」

荒船先輩が受け取ったハンモックを半崎くんに渡すのを目で追いながら項垂れると、筋トレマシンを部屋から出し終えたほかり先輩が「今度半崎に貸して貰え」と頭に手を置く。

「………そうですね。倫ちゃん手伝って来ます」
「オレ抜きで勝手に話進めないでもらえますか」
「いいって言うだろ」
「いいですけど…」

納得いかなそうな顔をした半崎くんにまた遊びに行くねと言って、倫ちゃんのいる奥の部屋に足を向けると、「うちで寝るつもりなのか…」との呟きが耳に入った。半崎くんがゲームしてるとき暇だからいいじゃない。

「倫ちゃんー」
「晶、これ箱に入れるの手伝ってくれない?」
「石像持って帰るの?」
「大きいのは作戦室に置かないようにって言われちゃったからね」

眉を下げてそう言った倫ちゃんに「そういえば」と口を開く。

「倫ちゃんが作ったオブジェは?」
「あれはロッカーに入れたよ」
「……………そうなんだ」

いいのかな。
部屋の隅に積まれたロッカーの中に入っていたものと思われる私物に目を止めると、倫ちゃんは「あれも持って帰る」と笑って言った。……オブジェの方が大事なんだ。芸術家って分からないなぁ。


年末大掃除を終えた作戦室をぐるっと見渡すと、以前よりずっとすっきりした印象になっていて少し寂しさを感じる。
解散する直前、荒船先輩により私物制限令が出されることとなった。なんで私に向かって二回言ったんですか…。あれ?私…大したもの持ち込んでないんだけどな?


(20170419)

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