狙撃手合同訓練D
「ユズルくんー!」
自分の順位を確認して早々にユズルくんと東さんの元へ駆け寄ると、「ほんとに来た…」と苦い表情を浮かべたユズルくんに東さんは困惑した表情を向けた。大丈夫ですいつもこうです。
「ユズルくんはもう少し優しくしてくれたらいいと思う」
「五月さんはもう少し静かにしてくれたらいいと思うよ」
ユズルくんの返しに「私うるさいですか!?」と思わず聞くと、「いつもより元気だな」と東さんは緩やかに笑った。
「後輩可愛いです」
「そうだな後輩は可愛い」
にこにこと笑う東さんにとって、この狙撃訓練場にいる隊員は全員後輩だ。「少し落ち着け」と頭を撫でた東さんの言葉にバタバタと動かしていた手を止める。うーん…落ち着く。
「東さん、このあと防衛任務なので行きますね」
「ああ、またな」
「えっ…ユズルくんもう行っちゃうの?」
「防衛任務」
「ぐ…」
「………ヒカリがまた遊びおいでだって」
「!!…行くね!」
「うん」
出口に向かうユズルくんの背中を見ながら弛む頬を押さえる。デレってやつだ…。
「よかったな」
「はい」
そういえば東さんと話すの久しぶりだ。今日は嬉しいことが続くなと考えながら、隣の人に話し掛けられた東さんから少し離れた。
「半崎くん置いてきちゃったんで戻りますね」
「またな五月」
「はい!また!」
入隊式が過ぎるたび、どんどん増えていく狙撃手に嬉しくなる。ユズルくんみたいな可愛い後輩もできたしな……と半崎くんの元へ戻りながら狙撃場に溢れる白い隊服に目を細める。………話し掛けられないけど。
使っていたブース近くのベンチに座る二人に近付くと、一人から呆れた顔、もう一人からは嬉しそうな表情を向けられた。
「ここにいたんだ」
「こっちのセリフなんだけど」
「ごめん」
「悪いって思ってないだろ」
「ユズルくんと東さんのとこ行ってた」
「ねえ、佐鳥にもなんか言って!」
「佐鳥おつかれさま」
「うんおつかれ!」
「先輩達は先に戻ってるって」
「えー…私達も戻る?」
「もう行くの!?」
「あっち行けば?」
「ちょっと半崎、面倒臭そうに言わないで」
作戦室戻って、中途半端な課題を終わらせないといけないのに…。佐鳥終わったのかな?
「あ」
「な、なに…?」
「暇なら一緒に課題やる?」
私がユズルくんに言ったようなことを言う佐鳥に仕方ないなぁと眉を下げてそう言うと、「数学の課題なら終わったよ」と友人はきょとんとした表情で首を傾げた。
半崎くんと同じこと言わないでよ!
(………佐鳥は終わってないと思ったのに)
(佐鳥に失礼だよ)
20170407
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