狙撃手合同訓練C
本日の合同訓練は、「通常狙撃訓練」である。やったー!と手を上げると「的撃つだけなのにうれしいの?」と倫ちゃんは目を丸くした。え?ひたすら的撃つのが楽しいんだよ?

「それに私の一番得意な訓練だもん」
「動くのが苦手なだけでしょ」
「苦手じゃない」
「どっちでもいいけど…」

ゲームを鞄に片付けながら受け答えする半崎くんにムッと口を尖らせる。ちゃんと聞いてない!

「お前ら時間なるから行くぞ」

扉の前で呆れた表情でそう言った荒船先輩に慌てて私も出しっぱなしだった教科書を鞄の中に仕舞う。作戦室で課題をやっていたのだ。
「がんばってね」と手を振る倫ちゃんに見送られて先輩達の背中を追う。四人で合同訓練に行くの久しぶりだ。

「並んで出来るかな」
「時間ギリギリだから難しいかもな」
「うっ」
「五月が課題いつまでもやってるから…」
「半崎くんだって片付け終わってなかったじゃん」
「言い合うな二人とも遅かったぞ」
「ごめんなさい…」
「すみません…」

荒船先輩じゃなくてほかり先輩に注意されてしまった……うう…ダメージが…。肩を落としたまま訓練場
に着くと、案の定四人並んで撃てる場所はなさそうだ。

「ばらけるか」
「そうだな」
「……一人寂しい」
「半崎連れてけ」
「五月了解」
「五月の面倒押し付けないで下さい……引っ張るな!」

抵抗する半崎くんの隊服の裾を掴んで空いてるブースを探しながら歩き始めると、文句を言う声は次第に小さくなっていった。訓練始まるから一緒に探してね!
あ、奈良坂先輩だ…茜ちゃんと一緒だ。あっちにいるのはサンバイザー着けてるから……えーと…生駒隊の…。あ!東さんもいる!!ちらほらと見える顔見知りにほっとして、空いている場所がないかときょろきょろと辺りを見渡す。出来れば知ってる人がいるとこがいい。全く知らない隊員の近くは気になって緊張するんだ。

「五月向こう2つ空いて…」
「あ!ユズルくん!!」

東さんの向こうに可愛い後輩の姿を見付けて駆け寄ると、私の声に気付いたユズルくんは嫌そうに顔を歪めた。

「なんで嫌そうなの!」
「五月さんうるさい」
「はは、元気だな」
「東さんおつかれさまです」

東さんに挨拶したところで、ハッとユズルくんの後ろを見る。……よし、知らない人だ。

「………何」
「当真先輩いるかと思って…」
「当真は遠征行ってるからいないな」
「あ、そっか」
「当真さんに用事?」
「ううん…最近ユズルくんと一緒にいること多いから…」
「そんなに一緒にいないよ」
「そう?……いない方が私は助かるけど」

当真先輩にいつまでたっても慣れない……悪いとは思ってるけど…会うと反射的に逃げたくなる。でもそうか…今日はいないんだ…ユズルくんといても絡まれることがない………わ、わああここでやりたい!でも二人の近くに空いている場所はない。

「……早く空いてるブース探した方がいいんじゃないの?」
「そうだね…」

訓練が始まってしまう。
ユズルくんに「あとで来るね!」と言って半崎くんの元へ戻ると、少し離れた二つ並びに空いていたブースに荷物を置いて場所取りをしてくれたらしい。

置いていってごめんね…そんなむくれた顔しないでよ。


(20170405)

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