佐鳥と私A
「あれ?今日は五月1人なの?」

狙撃訓練場に顔を出した佐鳥は、周りを見渡すと口を開くなりそう切り出した。

「すぐ来るよ」
「ふーん…じゃあ佐鳥が隣使お」
「えー」
「えーって何!?」
「嘘だよいいよ」

半崎くんの荷物が置かれた反対側のスペースを指すと、佐鳥は「今日も勝負する?」とニヤリと笑った。

「えっ…なんか企んでる?」
「なんで!?」
「佐鳥が自分からそんなこと言うなんて…」

いつも勝負を挑むのは私の方だ。珍しい言動に不審そうに佐鳥を見ると、慌てたように胸の前で大きく手を振った。

「企んでないよ!お昼一緒に食べようって言おうと思ってたけど!」
「……お昼ご飯奢れと」
「違うから!」
「一緒に食べるだけなら普通に言えばいいのに…」
「あと、こないだ勉強会途中だったから分からないとこ聞くって…とっきーが」
「いいよ!」
「即答!」
「佐鳥は教室でほぼ毎日見てるし」
「とっきーとの扱いの差…泣きたい…」

ぐすんと背中を丸めた佐鳥に苦笑して、そっと背中を叩く。そんなに落ち込まなくても。

「勝負する?」
「……なんか企んでる?」
「企んでないよ」
「……他の人と約束してなかった?」
「もう、どうしたの」

変なの。拗ねたような口調で「だって」と続けた佐鳥に耳を傾けると、小声で「最近いろんな人と仲良くしてるから」と続けた。

「……いろんな人?」
「こないだ菊地原と楽しそうに話してた!」
「なんで泣くの」
「泣いてない!」

楽しそうという部分に首を傾げるが、確かにこないだ菊地原くんと偶然会って話してたな…。見てたなら話し掛けてくれればよかったのに。

「五月の親友は佐鳥なのに」
「……………………うん」
「間!!!」
「拗ねないで」
「うっ…ごめん」
「佐鳥は…親友だよ」
「……無理して言ってない?」
「言ってない」
「ほんと?」
「ほんとだけど…」

そう言ってじとりと私を見る佐鳥から目を逸らす。そんな…改めて聞かれると…。

「……恥ずかしい」

「親友」だと言葉に出すのは、照れくさいよ。


(……実はとっきーから勉強教わる約束してた)
(聞いてない!!!)
(突然言ったら面白いかなって…)
(二人していじわるだ!!!)

20170207

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