イレギュラー門A
袋の隙間から小型トリオン兵の姿が見える。明るいうちから始まったトリオン兵の捜索が落ち着きを見せるころには、空は赤く染まっていた。

「…終わったのかな?」

無線で会話している荒船先輩を見ながらしゃがみこむ半崎くんに話し掛けると、彼は「終わりがいい」とダルそうに壊れたトリオン兵をつついた。

「すごいいっぱいいたね…」

虫みたいな外見に顔を歪めたが、嫌だと言えるわけはなかった。
「作戦完了」の合図が聞こえ、周りで他の隊員達が袋に小型トリオン兵を大量に詰めていく様子を見ながら、久しぶりに使った弧月を鞘に収める。
数千あった小型トリオン兵の反応は、今はレーダーに全く映っていない。全ボーダー隊員が駆り出された作戦はやっと終わったのだ。

「でも、これでイレギュラー門なくなるんだよな」
「そうだね…安心して寝れる」

いつどこで門が開くか分からない不安は、これでなくなるだろう。正直昨日はよく眠れなかった。
ひっそりと欠伸を噛み締めていると、荒船先輩が「トリオン兵集めた袋持って来い」とトラックの前で私達を呼んだ。

「全部乗ります?」
「乗らねぇな…とりあえず残り集めておくぞ」
「近くの奴らに声掛けてくる」
「半崎と五月も行って来い」

知らない人に声掛けるなんて無理だと指示を出した荒船先輩を見上げると、先輩は「二人で行っていい」と付け加えた。

「はぁ…ダルい」
「もう少しだからがんばろ」
「じゃあ、五月も手分けして声掛けろ」
「やだ」

荒船先輩は二人で行っていいって言った!半崎くんの背中を押しながら袋の口を縛るC級隊員の方へと向かう。
近くの隊員に一通り(半崎くんが)声を掛けて荒船先輩の元に戻ると、ほかり先輩も戻って来ていた。

「みんな帰らせたんですね」
「作戦は終わったからな…お前達も先に帰るか?」
「……先輩達は?」
「回収班が戻って来たら帰るから大丈夫だぞ」
「私達も残ります!」
「え、オレも…?」
「当たり前でしょ!私達荒船隊なので先輩と一緒に最後まで働きます」
「やることはないけどな」

去っていくC級隊員達を懐かしい気持ちで見送って、ふぅと息を吐く。イレギュラー門なんて初めてだったけど……とりあえず一段落着いたのかな。いろんな近界民いるんだな…。

未知の世界への不安を胸に閉じ込めて、腰に下げた弧月に触れながら「おつかれさまでした」と笑った。

(20170206)

prev next
[back/bkm]
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -