前編


 
「アズール氏、結婚おめでと」
「はい、ありがとうございます。イデアさん」

 僕はイデアさんから渡されたご祝儀を貰って、手元のお金に追加する。札束の角が揃ってなかったことが少し気になって、テーブルにとんとんと当てて揃えていると、イデアさんがフヒヒと独特の笑い方をした。

「何ですか、その笑みは。早くルーレットを回してください」
「いやさ、アズール氏の結婚ってビジネスっぽいなって思って」
「ビジネスって……貴方」

 僕のことを、なんだと思ってるんだと呆れた風の顔をしながら、僕は足を組み直す。

「正直、結婚はいい人が居たらしたい程度であって。
 僕の人生にマストな代物のではありませんね」
「……そうなの?意外」
「まあ、古い価値観になるかもしれませんが……」

 薬指に結婚指輪があるだけで、相手からの信頼性の印象が上がったり。実際パーティーの場では、パートナー同伴が望ましい等……様々なメリットは確かにあります

「アズール氏にとっては、デメリットの方がデカイの?」
「離婚調停とかになったら、面倒ですし。そんな事態を引き起こす気はありませんが、ただの世間体やビジネスのための結婚はリスクが“デカイ”と思いますね」
「……ふぅーん」
「ですが、イデアさんが雑談の話題に結婚を持ち出す方が……」

 意外ですね、と言おうとして、僕は一つの可能性を見出して、ぽかんとイデアさんを見つめてしまう。ルーレットを回そうとしていた白く長い指がビクッと止まって、怯えるようにイデアさんは僕を伺いみる。

「まさかイデアさん婚約者でもいらっしゃるんですか?」
「婚約者でもって……拙者、一応名家のお坊ちゃんなんですが」
「自分で言うな……いや、事実ですけど。
 そう言うってことは、婚約者いらっしゃるんですね?」
「……まあ、一応」

 イデアさんは0か100しかないところがある。きっと、今は0だ。いつもみたいに過剰に怯えてる様子はない。静かに沈み込んでいくイデアさんに僕は問いかける。

「イデアさんの婚約者さんって、どんな方なんですか?」

 僕の質問に、イデアさんは目を丸くして、どこか遠くを見るように口を閉じた。でも、すぐに眉を下げて、言葉がこぼれ落ちた。

「名前は突拍子もない子なんだ」
「名前?」
「アッ……」

 大袈裟に口を押さえるイデアさんに、僕はにっこりと笑いかけた。

「どうぞ。婚約者さん……いいえ、名前さんのお話ぜひ聞かせてください」
「……あ、アズール氏どうか、このことは内密に」

 僕が再び笑いかければ、イデアさんは諦めたようにため息をついた。



 名前……僕の婚約者の名前。婚約者って言っても、親同士が決めたもので、僕たち本人の意思はそこにない。彼女も大ざっぱに言えば、身内と言う名の親戚筋のひとり。まあ、特殊な一族だから、身内の方が全面的に都合がいいんだろうけど。彼女の両親も、S.T.Y.Xの業務の一部を担っていたから、僕の両親とも親しくて、一番婚約の話を頼み易かったんだと思う。それに、何より同い年だし、運命!と母さんと彼女のお母さんが言ってたけど。だったら、この世は運命だらけなんだが?

 彼女は可哀想で、気の毒な子だ。僕の親戚筋の生まれて、たまたま僕と同い年に生まれて、それだけで僕の婚約者として白羽の矢が立ってしまった。S.T.Y.Xは僕が死んでも活動は続けるだろうし、いや続ける必要があるだろうし。だから、僕は世継ぎをする必要がある。……いや、僕が彼女なら、絶対嫌なんだけど。呪われた一族の婚約者にされた上で、さらにソイツの子ども産まないといけないとか、絶対にイヤ!

 と、まあ、僕も婚約者に対して、僕なりに色んな思いを抱いていたのに。肝心の本人がその憂鬱さを吹き飛ばすような子だったから、僕の情緒はめちゃくちゃだ。

「イデアくん!」
「うわっ」

 学園にはない高い声と共に、僕は衝撃に襲われて尻餅をつく。一応受け身の際に防御魔法使ったから、怪我はないけど。痛みがゼロになるわけではない。僕が若干痛みに顔を顰めていることも気にせずに、彼女は僕のお腹の上で呑気に笑っている。

「君さぁ、何度言えば分かるわけ?そのユニーク魔法使うなって言ってるでしょ」
「……だ、だって、イデアくんすぐ逃げちゃうし」
「いや、そりゃ逃げますわ。君は僕のこと見つけると、イノシシみたいに突っ込んでくるし」
「だって、久しぶりだか」
「もー、その、だってって言い過ぎ。ほら、早くどいて」
「……はい」

 彼女はしょんぼりと落ち込んで、僕の上から大人しく退いてくれる。ちゃんと言えば分かる子なのに、どうしていっつも突っ込んでくるのか。彼女とは十年以上の付き合いになるけど、未だに理解できない。彼女のユニーク魔法はいわゆる転移魔法の類。しかも、彼女自身が魔力に敏感だから、僕の魔力を探し当てて、場所を特定しては、すぐに飛んでくる。そして、僕はいつも腰を破壊されるってオチ。

 僕が立ち上がっても、彼女は落ち込んだまま座り込んでしまっている。これ見よがし過ぎる。はあ、僕はため息をついて、彼女に手を差し出した。

「君の好きなゲーム、追加ステージ配信されてたよ」
「え、ほんとに!?」
「ほんとほんと」
「やったー。イデアくんお部屋行こ」

 彼女は僕の手を取って、僕の横に並ぶ。そして、一等嬉しそうに笑って、僕を見上げるんだ。まるで世界で一番幸せ者なんじゃないか?って思うくらい、嬉しそうに彼女は笑う。その所為で、僕は自分の隣が他人にとって幸せな場所なのだと、錯覚しそうになる。絶対そんなことないのに。

「イデアくん?行こっ」

 彼女が僕の手を引いた。僕はノリではない顔をしながらも、ハイハイとついて行く。

 名前、僕君のせいで、おかしくなりそう。僕は君を可哀想な婚約者だと思っていたんだ。いや、それは今でも思ってるけど。だから、僕はこの手をいつか離さないといけないし、君が離したら、受け入れるつもりでいる。でも、君はいつも呑気に楽しそうに……何よりも幸せそうに笑うから、僕が名前にとっての幸せになれるんじゃないかって勘違いしそうになる。

 そんな勘違いを起こしてはいけない。だって、この子に、こんな場所は似合わない。彼女は太陽の下で、日向ぼっこでもしてるのがお似合いだ。それに、彼女のユニーク魔法が答えだ。僕はどこにも行けないのに、彼女のユニーク魔法はどこにでも行くことができる。そして、それが何よりも、彼女らしさ、と言うなら、僕はやっぱりこのの手を離さないといけない。

「イデアくん見て!新しい衣装かわいい!」
「牧場の育成ゲームなのに、めっちゃ衣装凝ってるね」
「ちなみに、こんな衣装も!」
「え!?らぶソリの衣装じゃん!」
「前の配信のときにコラボしてたんだ。
 このシリーズの地形は豊作村がモデルになってるから」
「それ早く言ってよ!」



「姉さん!」

 昔まで名前ちゃんと呼んでいた声で、姉さんと呼ばれることに慣れたのはいつ頃だろう。後ろを振り返ると、ふよふよと浮いてるオルトくんがこっちこっちと手招きをしていた。

「オルトくん久しぶり!元気だった?」
「うん、久しぶり!姉さんも元気そうだね」
「うん、元気」
「良かった。じゃあ、とりあえず姉さんの部屋まで案内するね」
「ありがとう、オルトくん」

 オルトくんは私の手を引いて、私のお部屋まで連れて行ってくれる。私のお部屋と言っても、イデアくんのお家に私専用の部屋はない。ただいつも私が貸して貰っているゲストルームのことだ。

 私とイデアくんは親が勝手に決めた婚約者同士。でも、私たち本人どちらかが拒絶すれば、無くなる。そんな口約束みたいな関係。私は自分がイデアくんの婚約者だと知る前から、イデアくんのお家に通っていた。今思えば、少しでも抵抗感を軽減させる為の親の作戦だったかもしれない。両親はイデアくんのご両親のお仕事の手伝いをしていると言っていたから、当時の私は子どもは子ども同士で遊ばせてるんだな、としか思っていなかった。

 ある年の誕生日に、私は初めて婚約者の件を聞かされた。

「こんやくしゃ?」
 
 私はイデアくんの婚約者で、将来結婚して、一緒に暮らしていく。幼い私に対して、流石に気が引けたのか、世継ぎのことは何も言われなかった。そして、昔から呑気な私は何も考えずに笑顔で頷いた気がする。イデアくんと、オルトくんと一緒にいるの楽しいし、もう楽しいゲームの途中で家に帰らなくて済むのだと。

 ただ昔からイデアくんは頭の回転が早くて、色んなことに気付いて、色んなことを考えていた。だから、婚約を受け入れたと知ったイデアくんに、物凄く詰められたのを今でも覚えている。

「どうして僕の婚約者なんかに!」
「ええ?イデアくんとずっと一緒に居れるってお母さんが言うから……」
「……僕とずっと一緒に居たい?それだけの為に受け入れたの?」
「それだけ!?ひ、ひどいよ!私はイデアくんたちと遊ぶの……いつも楽しみなのに!」

 イデアくんはあーと苛立ったように声をあげて、髪をクシャクシャと両手でかき混ぜる。イデアくんは小声でボソボソと呟いてるけど、全然聞こえない。

「どうせいつか君だって、僕のこと忘れるクセに……いや、そうしなきゃいけないんだけど……だから、こっちは色々予防線貼ってるのに、なんで君はいっつも踏み越えて……しかも絶対何にも考えてないし……」
「イデアくん」
「うっわ」
「イデアくん私と遊ぶの嫌い?」
「……」

 俯いてるイデアくんの顔を覗き込んで、首を傾げる。私の言葉に、イデアくんは目を白黒とさせて、ぐにゃっと眉を寄せた。同じようにぐにゃっとしている青い唇が、もにょもにょと動いた。

「き、嫌いって程じゃない……けど」
「うん、私も好き!」
「いや、僕好きとは言ってな」
「ずっと一緒に遊ぼうね!」
「……やっぱり、何にも分かってない」

 イデアくんはどこか頬を赤くして、嬉しそうにした後、すぐに変な顔をした。それは私がまだイデアくんと遊んでいたいのに、親に引っ張られて、抵抗を諦めたときの、表情とそっくりだった。

 それからだ。イデアくんとのかくれんぼが始まったのは。

 私が学校に通うようになって、イデアくんのお家に遊びに行くのは基本長期休暇のみになった。だから、すぐに会いたいのに。イデアくんは居なくて、申し訳なさそうに眉を下げるオルトくんが出迎えてくれるようになった。それは今のオルトくんも、昔のオルトくんも変わらない。

「ごめんね、名前ちゃん。兄ちゃんまたどっか行っちゃって」
「だいじょうぶ。私かくれんぼ得意だから!」
「……そっか!じゃあ、僕も一緒に探す!」
「うん、ふたりで探そう!」

  なんて言ったけど、普通に初手から躓いた。イデアくん風に言うなら、高難度クエ並にイデアくんを探すことは難しかった。どこかに身を潜めてるわけじゃなくて、わざわざ魔法を使って、目眩しや、相手の認知に干渉したり、と様々な対策が練られていた。

「全然見つからない。ここかもって思っても、見えてないだけかもしれないし」
「うーん」

 オルトくんは腕を組んで考え込む。お湯が沸騰するように、オルトくんの髪がふつふつと燃え上がる。そして、パチっと一際弾けたときに、オルトくんが目をきらきらと輝かした。

「名前ちゃんって、魔力辿るの上手だったよね!?」
「え、じょ、上手って言うか、他人より少しだけ、ほんの少し敏感なだけだよ?」 
「だいじょうぶ!絶対兄ちゃん見つかるよ!」

 オルトくんの宣言通りだった。イデアくんの魔力はとっても繊細なのに、すごく鋭い。そんな魔力を探し出して辿れば、ある壁の前に到着した。目の前にはただの壁。私が困惑していると、オルトくんはポケットからある魔法道具を出して、マグネットみたいにその魔法道具を壁に貼り付けた。次の瞬間、そこにはゲストルームの扉が現れた。

「オルトくんすごい!」
「えへへ、これ兄さんの真似して作ってみたんだ」

 照れながらも、誇らしげに笑うオルトくんはとても眩しかった。その眩しさに目を細めていると、オルトくんに手を引かれる。兄ちゃんのところ行こう?と言うオルトくんに、私は大きく頷いて、扉を開ける。

「ゲッ」

 そこにはコントローラーを握っているイデアくんの姿があった。

「イデアくん久しぶり!」
「ぎゃあ!突っ込んでくるな!」



「え、イデアくん風邪?」
「せっかく来てくれたのにごめんね、姉さん。
でも、今の兄さんなら大人しく寝てるから……って、あれ!?いない!?」
「まさか……イデアくん風邪なのに、かくれんぼしてる?」
「もう兄さんってば意地っ張りなんだから!」



 世間が長期休みになると、名前がやってくる。名前は”かくれんぼ”なんて言ってるけど、こっちは別に遊びたくてやってるんじゃない。少しでも、彼女との時間を減らしたかった。それに、いつか彼女がこの”かくれんぼ”に飽きたり、捻くれて面倒な僕に愛想を尽くしてくれればいいと思った。そして、婚約の話が無くなったらいい。名前から僕の手を離して欲しかった。もう、僕から手を離すには、彼女に近付きしすぎた。

 普段なら、名前対策をするところに、好きなゲームの発売日が重なって、はしゃぎ過ぎて気付いたら三徹をかましてしまった。軟弱な拙者は、風邪をひいた。しかも、

「けほっ」

 発熱ありの本格的なヤツ。最悪だ。オルトの説教を念仏のように聞きながら、僕は冷えピタをおでこに貼って、ベッドの中で唸ることしか出来なくなっていた。だが、彼女が勝手に”かくれんぼ”と言っているだけだとしても、何もせずに彼女に負けるのは絶対イヤだった。内なるオルトが「兄さん、目的と手段が逆転してるよ」と言った気がした。

 召喚魔法の応用をすれば、名前のユニーク魔法と似た効果が出ることは分かっていた。あとは魔力を検知されないように……うう、頭痛い。これじゃあ、寝るのもままならない。うーうーと唸っているうちに、拙者は睡魔に負けてしまった。

 名前対策に精を出していると、オルトが遠慮がちに僕を呼ぶ。

「え?名前が?」
「うん、今回は来るの難しいって。さっきごめんなさいのメールが届いたよ」
「へえ、まあ、これで今回は名前から逃げなくて済みますわ」
「……兄さん」

 心配そうなオルトが場面展開のように、瞬きをすると一瞬で消える。場所は僕の自室。うわ、これ夢か。そうだよ。名前は一度だって、約束を破ったことがない。なんて、頭のどこかでは気付いているのに、夢の中の僕は必死にキーボートを叩いていた。名前のスマホを潜り込んで、カメラを勝手に起動させる。いや、起動させなくても、彼女は自ら映し出してくれた。

 ここはどこ?遊園地?彼女はニコニコと楽しそうに笑って、知らない相手の肩に頭を預けて、カメラを見上げていた。浮かれてピースしている細い指先をへし折ってやりたいと思った。君は僕の婚約者のくせに。怒りの感情はぶわっと瞬間的に広がったけど、すぐに落ち着いてしまった。

 やっぱり、僕は彼女の手を離さないといけない。悲しいぐらい、彼女には外の世界がぴったりだから。



「ここにも居ない!」

 イデアくんの魔力全然辿れない。微かに追いつけても、あくまで残留だけ。イデアくんが居そうな場所は殆ど探したし。オルトくんも探してくれてるから、大丈夫だと思うけど。でも、やっぱり心配だ。たださえイデアくんあんまり気強くないのに、風邪をひいて、一人になってるのだと思うと、それだけで自分も泣きそうになる。

「名前は本当にイデアくんが好きなんだね」

 不意にお父さんの言葉を思い出した。今日イデアくんのお家に行く準備をしているときに、その言葉を掛けられたのだ。お父さんの言葉に、お母さんもそうね、と微笑ましそうに相槌を打つ。第三者から言葉にされて、改めて考えてしまった。

 イデアくんのことが好き?正直、私にとって、イデアくんと一緒にいることは当たり前にも近いことだ。イデアくんはその感覚を、「刷り込みだよ、刷り込み。その感覚を植え付ける為に、名前はわざわざ僕たちと一緒に遊ばされてたんだよ」なんて言うけど。それだけ、だろうか?

 だって、イデアくんはちっとも優しくない。

「名前はすぐ泣くなぁ」
「だ、だって」
「だってって、すぐ言い訳するし」
「……」

 イデアくんは昔から意地悪なところがあって、よく泣かされた。今思うと、どうしてそんなイデアくんと遊ぶことが楽しかったのか謎である。でも、私がイデアくんにゲームで負かされて、イデアくんの出題したなぞなぞに答えられなくて、悔しくて、泣いちゃうと、イデアくんは茶化しながらも、最後は寄り添ってくれた。強気だった炎がしおしおと弱くなって、座り込んで泣く私の手を引いて、引っ張ってくれた。

 イデアくんに手を引っ張られる度に、思った。もしイデアくんが泣いちゃうときは、私もイデアくんの手を引っ張りたい。だから、イデアくんが一人で俯いていると、勝手に身体が動いちゃう。何があったの。悲しい?寂しい?イデアくんの、本当の気持ちが知りたいよ。私じゃ力になれないかもしれないけど、それでも、やっぱりひとりで居てほしくない。

 意地悪くて、優しくて、気が弱い男の子。弟思いのお兄ちゃん。捻くれてて、面倒で、でもほっとけない。そんな私の婚約者。そんなイデアくんが、私は好き。なんなら、刷り込みでもいい。だって、もう遅い。イデアくんを好きな自分を無くしたら、それはもう私じゃない。それぐらい、イデアくんは私にとって、大事で大きい存在。

 そう思うと、お腹の底から魔力が溢れてくるのが分かった。
いつも一緒にいたい。イデアくんとずっと一緒にいたい。イデアくんを一人にさせたくない。

「イデアくんのところに行きたい」



 最悪な夢の目覚めに、ぼーっとしながら僕の口が勝手に動いた。

「名前……君に、会いたい」

 うわ、きも。なに、この弱々しい声。拙者の声!?誰も聞いていないはずなのに、羞恥心に苛まれていると、いきなりお腹に強い衝撃を受けた。いたっ!てか重いんだが!?白目を剥きそうになりながら、視線を動かすと、泣きそうな彼女の姿があった。

「い、イデアくん!?」
「え、名前?なんでこ」
「イデアくんだいじょうぶ!?すごい心配したんだよ!あ、オルトくんに伝えないと!」

 彼女が目の前の現れたのだ。今までみたいに突進してくるんじゃなくて、上から降ってきた。まるで、いきなり現れたかのように。

 この日が、初めて名前のユニーク魔法の発現した日だった。

「もう!兄さんリネン室にいるなんて思わなかったよ!」
「ね、寝るのに最適かなって……いっぱいシーツあるし」

あとがき

- ナノ -