Swingsso beautiful yet terrific.

空気が乾燥する季節はあまり好きではない。
だからと言って、春が好きかと聞かれたらそうでもない。冬も春も、好きではない。

「……疲れた」

思わず言葉がもれるほど、俺は疲労しているらしい。身体を引きずるようにして家へ帰宅すると、夜中のせいか静かだった。週末が近づくと夜更かしがちなる彼女が寝ているせいもあるだろう。

さっさと風呂に入って、歯を磨こう。玄関で倒れ込みそうになったが、あんな硬い床で眠りたくはない。その一心で、俺は廊下進んだ。頑張った。

風呂も歯磨きも済ませ、後は寝るだけのはずだった。俺はペットボトルのお茶の蓋を閉めて、ふらふらと彼女の部屋に侵入していた。豆電球派の彼女の部屋は少し明るく、彼女が寝ているベッドまで辿り着くのは簡単だ。抱き枕を抱いて寝ている彼女をさらに抱き込むようにして、俺は狭いベッドに潜り込む。

軽くはない彼女の身体の下に手を潜り込ませて、俺は躊躇なく彼女のパジャマを捲りあげる。さらにインナーの下へ手を忍ばせて、彼女の肌へ直に触れる。眠っているからか、いつもより体温が高く、こっちも眠たくなってくる気がした。柔らかい腹を撫で上げて、下着を付けていない胸を下から揉みあげる。ふにふに、と形を素直に変える胸に癒されながら、俺は彼女の頭に顔を押し付けた。

シャンプーと彼女の匂いが混ざった感じが好きだ。てか、彼女が身にまとっている匂いが好きだ。死んでも言わねぇけど。シャンプーとか、匂いが強くなければ何でもいい。

両手で彼女の胸を揉んでいると、彼女の息が若干荒くなって、俺のものも元気になって、彼女の尻に擦るように押し付けた。布団の中で、もぞもぞと動くのは何だか悪いことをしているみたいだ。まあ、実際寝ている彼女に手を出していることは褒められることではないが。

「…ん、ちひろ?」
「…よう」
「うん?…ん、おかえりなさい」
「ただいま…」

珍しく呼び捨てにされて、ちょっとドキッとした。自分の状態を理解しているのかよく分からないが、彼女は俺のことを確認すると、眠たそうにしながらもおかえりっと言ってくれるので、それに返しながら彼女の頬に唇を寄せる。そんな彼女にペットボトルを渡すと、渡されたままに飲んで、蓋を閉めたことを確かめてから、彼女を強く引き寄せる。ころころと転がっていく、ペットボトルは後で回収する予定なので気にしない。

もうこれで、我慢しなくていい。まだお茶で湿っている彼女の唇を奪えば、驚きつつも彼女は俺のキスを受け入れて、キスをしやすい位置を探るように身体の向きを変える。彼女も俺も、どこか眠いせいか、擦り合わせると言うより、重ねるようなキスを繰り返した。

「…」

布団も、パジャマも捲り上がったりして、ぐちゃぐちゃに乱れているが後で直せばいい。俺は本能のまま彼女の下腹部を撫でて、そのまま手を下げる。パジャマの上から押すように触れると、彼女が吐息をもらす。何度か撫で上げると、じれったいように腰を動かすので、パジャマの中へ手を入れて、すっかり湿っている下着越しに触れた。

「…んっ」
「寝ながら、感じてた?」
「寝てるから分かんないよ」

キスの合間に聞いてみると、きょとん、と平和ボケした顔で返されて俺は少し返答に困る。別に辱める趣味があるわけではないが、真面目に返されても困る。

「濡れてるから、感じてるんだろ」

彼女は下着越しでも充分に濡らしていて、俺の指が滑るように動く。一枚隔ているから決して入り切ることはないが、下着ごと入れるように指を押し付けると、ぴたりと彼女のあそこに張り付く。その感覚はあまり好きでないのか、彼女は嫌そうに眉を顰める。

「…」

俺の言う事に納得はしているようで頷くが、触り方が気に入らないようで、キスが出来ないように顔を背けられた。子どもっぽい対応は寝起きの所為だろうか。普段よりぼんやりとした頭を動かしながら、俺は彼女の下着の中にようやく手を入れた。下着を下ろしていないので、必然的に彼女のあそこ全体に手を押し付けた形になる。

彼女の眉が色っぽく寄せられて、俺のスウェットの胸らへんを掴んで、揺らしてくる。おそらくちゃんと触れて欲しいのだと思う。身体はこちらを向いていても、足は触りやすいようにか、なんか開いているのがエロい。少し動きにくいが、指先で全体を擦れば、彼女は腰揺らして、唇を半開きにする。その唇を塞ぐようにキスをして、彼女の中に指を入れていく。

予想よりも熱く最近ご無沙汰だった所為か、いつもより狭い気もする。広げるように指を動かすと、厭らしい音がして、彼女が恥ずかしそうに足を閉じようとした。そんな動きも気にせずに、彼女の中でバラバラに動かしていた指をまとめて、ぐるりと大きく円を描いたり、細かい振動を与えたりすると彼女の腰が跳ねて、唇を離された。苦しいらしい。

「…ちひろさん」
「…」
「そろそろ…これ…」

彼女の太ももに押し付けていた俺のものを、彼女の手が遠慮がちに撫でる。そんな刺激ですら、気持ちが良くて声がもれそうになった。もう少しおねだりして欲しい気もあるが、俺ももうそんなに余裕がない。眠気がすぐそこまで、来ている。

「…やあ…はや、く」
「…」

指を引き抜くと、彼女が寂しそうに両手を彷徨わせる。彼女は入っていたものがなくなる瞬間が好きではないらしく、すぐに入れてと俺に触れようとするのだ。寝転んで後ろからと考えていたのに、俺の身体は勝手に動いて、彼女の足を広げる。結局、正常位になった。彼女の下着を脱がして、自分も脱ごうとして、その時間すら惜しく感じて、取り敢えず下げるまでに留めた。

彼女の手が俺の顔に添えられて、キスを一つ。唇を何度も重ねて、舌を擦って、彼女の口の中へ落ち着かせる。キスをしながら、彼女の中は入っていく。敏感な所が彼女と繋がって、何かもう気持ちが良い。難しい事はどうでも良くて、ひたすら彼女の声が聞きたくて、触れたくて、俺も彼女も息遣いが荒い。

服を着たままだから、どうしても動くにくい。もどかしいとも思うけれど、それすら快感を生んでいる気がした。彼女の小さなベッドが揺れて、音を立てる。

身体のあらゆるところが彼女に触れて、繋がって、視界には苦しそうにでも、気持ち良さそうに眉を寄せる彼女が居て、音ですら俺たちが動いている音しかしなくて、何か俺と彼女でいっぱいだった。

そんないっぱいに沈めるように、俺は彼女の身体の奥を求めて腰を動かした。彼女が息を詰まらせる度に、ちょっと落ち着けよと頭の隅で思う。思うだけで、行動に出来ない。本当に、彼女の身体の奥、ずっと奥を突くと、彼女は喉を反らせて、キスをしていた唇を離す。彼女が苦しいから、唇を離してしまうのは分かっている。でも、嫌だった。唇を追い掛ければ、途切れ途切れに言葉を続ける。

「あ、や、だ…だ、め」
「…やだ?」
「そこ、やだ…なんか」
「やめる?」
「…そう、いうのじゃ、なくて」
「……」
「きもち、いい…から」

彼女の言葉が真意と違っても、嫌だと言われるとちょっとセーブがかかる。動きを緩めると、彼女はゆるゆると首を横に振った。さっきのように、俺の首に回した両手をぐっと寄せると、俺の首筋に顔を埋めた。

それを合図に、俺は彼女の腰を遠慮なく掴んで、腰を打ち付ける。首筋に、彼女の熱い吐息が触れて、腰に刺激が走った。

「…あっ、んっ…ちひ、ろ」
「…ん」
「あ、…やあ、ああっ」
「うっ」

俺が低く呻くと、彼女は俺の首筋に歯を立てた。



「…う、べたべた」
「……ねむい」
「…同じく」

色気のない会話に二人して、目だけで笑って、再び俺たちは布団に潜れるよう後処理を頑張った。眠い中、頑張った。

***

起きると、腕の中には彼女ではなく彼女の抱き枕があった。彼女は既に起きているらしい。しかし、非常に眠たい。腕の中に居る奴が彼女ではないことに不満を覚えたが、その不満に抗おうとしても睡魔がそれを許さない。仕方なく、彼女の匂いだけで妥協する。この抱き枕にはすっかり彼女の匂いが移っているのだ。

二度寝もそこそこにして、リビングへ顔を出すと彼女が朝飯を作っている所だった。テーブルの上には、朝の割には豪華で俺の好きなものばかり…、腹減った。寝起きのままぼーっと立っている俺に気付いた彼女は俺に笑顔で駆け寄る。

「おはよう、千尋さん」
「うん…」
「夕飯も、美味しいの作るからね!」
「…うん」
「じゃあ、顔洗って来て!」
「…うん」

いつもより元気な彼女に反比例で俺のテンションは下がっていく。腹は素直に彼女の手料理に喜んでいるが、俺の心はもやもやとしたままだ。

***

「地獄だった」
「まあまあ、もう終わったし!ね?」

私に凭れ掛かるようにして歩く千尋さん、なんて年に一回しか見ないだろう。普段私が腕を組もうなら、絶対零度の眼差しで見下ろしてくる癖に、私に無駄にくっ付く千尋さん、しかも外で。

うーん。普通の人なら気付かない表情の変化に気付けるようになった人が、今日の千尋さんを見たらどうしたんだ!と思わず声を掛けたくなるほど、千尋さんは元気がない。落ち込んでいる。

「…なあ、風呂」
「はいはい。髪も身体も洗います洗います」
「…うん」

ぐったりとしている千尋さんの頭を背伸びをして撫でてみると、ぐりぐりと私の手に自分から頭を押し付けて来た。なんだか、実家の猫を思い出す。もっと撫でろと自分からアピールしてくる猫の仕草にそっくりだったからだ。千尋さんには悪いけど、こんなに可愛い千尋さんを見れるなら悪くないかも。

「千尋さん、今日はだめだって。お医者さんに激しい運動だめって言われたでしょ」
「…どうしても?」
「どうしても。一緒に寝るから、早くベッド行こうね」
「…仕方ないな」




大人になっても予防接種が嫌だけど、会社で打てと言われて、嫌々打って彼女に甘えて気を紛らわせようとして、えっちしようとするけど、注射の後はダメだと言われて、注射をする前にえっちして甘える流れが定着した話。

Qどうして注射が嫌なんですか?
自分の身体に得たいの知れないものを入れられるのが嫌だから、だそうです。

やんやん

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