Swingsso beautiful yet terrific.

同じ姿勢で長時間居ることは良くない。それは致している時でも、同じだと思う。しょっちゅう体勢を変えずに、本を読んでしまう俺は身を持ってそのことを知っている。

いわゆる騎乗位で、彼女が俺の方に上体を倒した感じでするのが個人的に俺は好きだ。下から見る余裕のない彼女の表情や、揺れる胸は特別胸が好きでなくとも、なかなかくるものがある。

だが、すぐへとへとになって、腕を立てれなくなる彼女にこの体勢は辛いらしく、ものの数分でぺしゃんこである。身長差もそれなりにあるので、キスもしにくい。

俺のものが彼女の中から出る瞬間ですら、彼女が子犬のように弱々しく鼻を鳴らすものだから下半身がさらに固くなる。微かな気だるさを感じながら、彼女の上体を起こしてやる。対面座位になっても、彼女はぐったりとして俺にもたれかかった。

乱れた髪を直して、真っ赤な耳を見つけた。驚かさないようにそっと声をかけたのに、彼女は大袈裟に声を上げて、ぺしんと俺の背中を叩いた。あんまり痛くない。

「なんだよ」
「やっ、……わざとなの?怒るよ?」

やっと喋るくらいに回復した彼女は真っ赤な頬を膨らまして、目を釣り上げる。彼女の言葉に理解が追い付かず、まぁいいかと思い、彼女の腰を持ち上げた。彼女は驚いた声を上げながら、俺の首に捕まって、ぎゅうっと目を瞑る。

この癖は初めて彼女を抱いたときから、変わっていない。どうしても自分の中に、はいる瞬間が慣れない彼女は注射を怖がる子どものように目を瞑る。そんな癖すらかわいいと思ってしまうくらいには俺は彼女に入れ込んでいる。

「大丈夫か?……お、おい」
「ん、やぁっ」

さっきから気遣うために、彼女に声をかけているのに。彼女は俺が口を開くたび、身体を揺らして、まつ毛もふるふると震わせて、熱い吐息をもらす。まるで、彼女が俺の声に反応しているみたい……いや、みたいじゃなくて、感じているのかもしれない。

「この体勢でいいか?キツくないか?」

試しに耳もとで囁いてやると、面白いぐらいに彼女の中が反応して、俺のものを締め付ける。弱々しく熱い小さな手が、俺の背中を滑る。爪でも立てたいらしいが、そんな力も残っていないみたいだ。

「う、……千尋さん、わざと」
「いやか?」
「ひっ、……や、じゃない、けど、くるし、い」

俺の腰の動きはあくまで、ゆるやかだ。でも彼女の息は馬鹿みたいに荒い。耳の形に沿って指で触れつつ、ワントーン下げて囁けば彼女はいやいやと首を小さく横にふる。

「まあ、もう少しだからっ…」
「ちひろさん」

弱々しい彼女なりの抵抗なのか。ぐっと首もとを引き寄せられ、口を塞がれる。なるほど、これだったら弱点はつかれないな。関心していると、彼女と目が合う。

あ、やばい。しまった。今更だが、俺と彼女は恋人同士。つまり、好き合っている関係だ。そんな好きな女の、キスに夢中になってるエロい顔を見て、冷静で居られるほど俺は達観していない。

……。なんだ、彼女が俺の声に弱いように、俺だって彼女の目に弱いとか、そんなんだったりするのだ。

困り眉で、伏せがちな目で、開けている癖に俺と目が合うと逸らしてしまう。俺はそれが気に入らないから、下から強く突き上げて、彼女がまた目を釣り上げて俺を見る。

彼女の目に弱いのに。その目に俺が映ってないと、気に入らない。そんな矛盾した気持ちに悩まされるのは彼女に出会ったときから、今まで続いている。まったく迷惑な話だ。

だけど、これからもそんな気持ちに悩まされたいと思う俺も大概にした方がいいな。


「千尋さん、最近えっちのとき、よく話すよね?」
「気のせいだろ」

彼女が俺の弱点を知って、意地でも見上げてこようとする日が来るとは、このときの俺は考えもしなかった。

弱点

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