更新とか

雛菊サブ見出し

(´・ω・)

更新履歴ではなくもはや日記

※下書きなので、pixiv版デフォルト名アリ

0待ち合わせ

 待ち合わせはいつもの公園。もう今までの付き合いで、彼女が早めに行動することは分かっていた。この前みたいにルル氏が絡まれてたらイヤだし。イデアは予定よりもかなり早めに到着したのはいいが、失神しそうになっていた。朝の公園予想より人多ッ!ジョギングする老夫婦、これからピックニックにでも行くのであろう親子連れ、そして唯一の癒しワンコのお散歩。そうだった。世間では日中が活動時間帯なんだ。イデアは普段浴びない健全さに白く燃え尽きそうだった。何より、きゃらきゃらと楽しそうに街へ向かっていく同年代の女子が一番眩しかった。

 とてもじゃないけど。ベンチになんて座ってらんない。イデアは以前のように茂みに隠れて、ふぅと息を吐いた。やはり、拙者は日陰が落ち着きますわ。まだ待ち合わせの時間まであるし。時間が近くになったら、出て行けばいいでしょ。そう思って、ヘッドホンを耳につけて、タブレットでソシャゲを開く。

「そういえばさ、最近ルルよくここで見るよね」

 も、もももしかして、ルル氏の知り合い?友達!?イデアはタブレットを抱き込んで、息を潜める。イデアの心境を例えるならば、ホラーゲームで追い込まれた主人公だろうか。

「NRC生の男の子と遊んでるんだって」
「……男の子いた?」
「ルルのそばにタブレットあったでしょ?」
「あ、青いヤツ」
「ルル曰くリモートで遊んでるんだって」
「へえ、最先端スタイル。でも、ならルルもリモートでよくない?」
「ルームメイトいるから、外の方が気が楽って言ってた」
「それは確かに」

 ルル氏の友達、視界広過ぎ……?なんと言うか、類友って感じ。こんんな子達が周りにいるなら、ルル氏も捻くれることなく育つのかも。イデアが彼女のことについて想いに耽っていると、ガサガサと草を踏む音が聞こえてきた。え、なに、だれ。

 イデアがびくっと怯えて、目をギュッと瞑っていると、聞き慣れた声が聞こえて来た。

「あ、やっぱりイデアくんだ」
「……ルル氏」
「遅くなっちゃってごめんね。気分悪くなっちゃった?」

 イデアが顔を上げると、心配そうに自分を見つめる彼女がいた。彼女はイデアの横にしゃがみ込んで、控え目にイデアの顔を覗き込む。イデアは近ツ!とビビりながら、ゴニョゴニョと口を開く。

「え、えっと……だいじょ、ぶ」
「そっかぁ。良かった……イデアくんこないだと違うね」
「え、え……?」
「えっと、制服!こないだのパーカーもイデアくんっぽくて良かったけど、フォーマルな感じもかっこいいね」
「……」

 あ、やっちゃった?彼女は口を閉じて、イデアを伺いみる。切れ長の目が大きく見開かれ、青白い頬が真っ赤に染まって、青い髪の毛先がピンクに近い赤色になっている。た、多分、照れてるんだよね……?

「……そ、そんなこと、ないよ」
「ええ、じゃあイデアくん立ってみて」
「えっ、ルル氏!?」
「せーのっ!」
「わっ!」

 小さな両手がイデアの両手を掴んで、引っ張り上げる。日陰から日向に引っ張り上げられたイデアはドラマのワンシーンかと思った。葉っぱが舞い上がって、木漏れ日がきらきらと優しく眩しい。その中で、自分を見上げる彼女の瞳が一番眩しかった。

「ほら、やっぱり!今日のイデアくんかっこいいよ」
「……」

 何が、ほら、やっぱりなのか。イデアにはさっぱり分からない。それでも、彼女の目に相変らず嘘はなくて、本当しかなくて、イデアはあ、ありがとうと言うことしか出来ない。その一言だけでも、彼女は嬉しそうに笑う。イデアはチラチラと彼女を見て、むぐむぐと唇をつぐむ。

「……ルル氏、今日ダッフルコート色違うね」

 僕のバカ!その色も似合うねぐらい言え!バカ!イデアが死にたくなっていると、彼女はまた嬉しそうにして、身体軽くひねって見せる。なに、その可愛いポーズ。

「イデアくんの推しに合わせてみたの。あの子も、冬になるとダッフルコート着てたし」
「せ、拙者の推しに合わせてくれたの!?」
「う、うん……け、軽率だったかな?」

 イデアの勢いに、彼女は眉を下げる。オタクは色々と難しいらしいし。彼女がイデアくん怒っちゃったかな……と、無意識のうちに上目遣いでイデアを見上げてしまう。その仕草に、イデアは変な呻き声を上げて、膝を下りそうになる。きょ、今日のルル氏、いつもに増して破壊力が……。

「ぜ、全然。ぼ、ぼ僕は嬉しいけど、ルル氏はいいの?ルル氏の推しはルピナちゃんでしょ?」
「……る、ルピナちゃんの格好はハードル高いから」
「あ、あ……あの子、結構パンチある格好してるよね」
「か、可愛いんだけどね!私があーいう格好はちょっと……キツいと思うから」
「……」

 あはは、と彼女が苦笑いしているが、イデアはそうだろうかと勝手に脳内でシミュレーションを組んでしまう。彼女の推しのルピナちゃんはマジどきのロリ要素も担っている。天才少女ゆえに、飛び級で高校に通っている設定だ。要は合法ロリと言うことである。

 他のヒロインよりも、幼さが残る顔立ちや身体付き。身体は薄っぺらくて、小さい。制服の上からダボっと見せるパーカーを着て、動き辛いという理由でスカートはかなり短め(パンツスタイルは製作陣の拘りなのか意地でも許されない)。極め付けに、ボーダーのニーハイ。ルル氏は年相応に成長してるし……。イデアはいつか見たタイツに包まれた彼女の太ももを思い出した。ルル氏が、ルピナちゃんの格好……。太もも、ニーハイ……。

「イデアくん?」
「え、あっ、拙者別にそ、それはそれでいいなとか、思ってないでござる!」
「え、えぇっと?」
「ご、ごめん。こっちの話!」
「う、うん?問題?ないなら、いいんだけど」

1お店まで
「お店予約してくれて、ありがとう」
「さ、誘ったのこっちだし、何より僕が待つの耐えられないから」
「イデアくんっぽい理由だ」

 ふたりは目的のカフェまで、お喋りをしながらのんびりと向かっていた。公園を出ると、賑わっている市街が待ち構えている。イデアは自分が通って来たときより、活気がある市街にヒェッと悲鳴を上げた。彼女は隅っこ通って行こ、とイデアの手を優しく引っ張ってくれた。イデアは彼女が余りにも、自然に自分の手を取るものだから、特に抵抗することもなく彼女に付いて行く。だが、そこで問題が発生した。

「まさかルル氏が方向音痴だったとは」
「め、面目ない」

 彼女はイデアをリードしながら、自分もイデアのタブレットにリードされていた。公園から目的のカフェまでは、徒歩二十分。のんびり歩けば、そこまでキツい距離ではない。学園物に登場するカフェのモデルとだけあって、現実のカフェも麓の街の中でも、賑わっている場所にあるらしい。比較的若者……学生向けの雑貨やブティックが並ぶ通りを抜けた先に、飲食店が揃っている場所に出る。

「いや、本当に地図読めなくて……地図読めないっていうか、自分がどこに居るのか把握ができてない?って言った方がいかも」
「聞いたことありますぞ。同じ道でも、逆方向から来ただけで、もう分からなくなるって」
「本当にそれなんだよ。だから、学校通い始めたときも大変だったんだよ」
「ふひひ。ルル氏、ゲームのマップでも迷ってましたなぁ」
「だって、似たような構造してるからさ」

 彼女はチラッと雑貨屋に視線を向ける。あのガイコツのキーホルダールピナちゃんっぽいかも。これがイデアくんが言ってた概念グッズってヤツかな。

「でも、自分の部屋に戻れなくて、半泣きになってたの……ふふ」
「もーイデアくん笑いすぎ」

 そう言って、振り返って彼女はギョッとする。イデアの顔色が悪い。イデアくん気付いてない……?表情は楽しそうだし。無理してる様子もないけど……、でも、そうだよね。外出るの得意じゃないって言ってたし。

「イデアくん無事カフェまで連れてくからね!」
「え、なに、怖い。急にフラグ立てるのやめて」

2023.03.21 02:17

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