「今ま、で?」
柔い感触の、恐らく布団から立ち上がりかけた刹那は微動だに出来ないことに気がついた。両手足に感じるのは重い金属の感触。
理解不能な事態に思わず声を上げようとして、――瞬間、不意に口元が冷たい手で塞がれた。
「……ふふっ…。」
耳元をくすぐる吐息に身をよじったが、すぐに固くした。
首筋に走る痛み。ぶつりと皮膚を突き破るそれは知っている感触なのに、知らなかった。
血の匂いを好まない刹那はいつもこの吸血行動の時、痛みよりも匂いに苦しむ。
それなのに、香るのは甘くていい匂い。
間違いなくこの牙は凛月のもの。でも、これは――――。
「や…め…。」
思わず拒否の声が漏れる。それは肩に顔を埋めていた凛月にも聞こえて。
「あはは、これで一緒だねぇ〜♪」
そう言った凛月は刹那の口に指をねじ込み、ある一箇所に触れた。
―――尖った、犬歯。