ジューンブライドに憧れる、なんて高校から毎年変わらず六月の時期になったら窓の外を見ながら俺に聞こえるか聞こえないくらいの声量でいつも呟いていたっけな。高校時代ただの喧嘩友達からいつの間にか恋人になっていて、気付けば必要不可欠な存在になっていた。今年の4月、俺は柄にもなく朝から緊張していて例えるなら九回裏、満塁でここでヒット打たなきゃ試合終了になるって時に俺に打席が回って来たとき並の緊張感だ。

「元希がご飯行こうなんて珍しいね」

ま、まあな!なんて返事するだけで声が裏返ってた気がする。今思えばあのとき名前は頭のどこかでプロポーズされるってわかってんじゃねえのかなって度々思う。滅多に行かないレストランの窓際で夜景を堪能しながら食後のコーヒーがきたところで「大事な話があるんだ」と切り出したら名前は静かに「…はい」と頷いた。

「俺と結婚してくれないか」

「……っ、は、い」

ぽろぽろと目から涙を流す彼女に俺は人目も気にせず「うっしゃ」と叫んでしまった。

六月の、真っ白いウエディングドレスを着飾っていつもよりも綺麗になったあいつを見て不覚にも泣きそうになった。


「……綺麗だ」


なんて言葉が零れれば彼女はふわりと笑ってありがとう、と頬を赤く染めていた。


「名前、愛してる」

「わたしも愛してるよ」




付き合って5年、同棲して2年目にして俺たちは結婚することになって新しい新居に引っ越した。同棲をしていたもののいざこの先もずっと一緒にいれるのか、と考えたらなんだかくすぐったかったのを覚えている。
シャアー、とカーテンを開ける音で目を覚ませば眩い光が視界いっぱいに広がった後、「あ、元希おはよう」なんてカーテンの手前にいる名前が笑う。あぁ、なんか、幸せってこういうことを言うんだろうな。


「もー、目覚ましたならさっさと起きなさいよね」

「ん、今日休みだからもうちょっと」

「えー?」

「いいだろ」


少し不満げな顔の名前の手を引っ張ってもう一度布団の中へと呼び込んで抱き締めれば不満そうな声を洩らしつつも嫌じゃなさそうだから俺もまた調子に乗る。


「どーしたの、今日やたら甘えんぼじゃん」

「うるせ」


変な元希、と呟きながら俺の胸元に頭を擦り付けてきて思わずぎゅうと抱き締めてから名前の頬に手を当てて唇を重ねた。


「……んっ」

「…かわい」

「ばか、ほらご飯にしよう?」

「ん。名前。ありがとな、大好きだぜ」

「わたしも。元希のお嫁さんにしてくれてありがとう」


大好き、と恥じらいがちにいう彼女に再度幸せを噛み締めながらキスを落とした。