「さ!自己紹介も済んだところだし皆ドリンク頼も!」
「俺は生〜!泉もそれでいい?」
「あ、じゃあわたしたちもそれで」
「みんな可愛い顔していけるクチ?」
「浜田さんってお世辞上手ですね」
友子がいつもよりきゃっきゃしてるのが手に取るようにわかるので横で微笑ましくみてると視線に気付いたのか余計なことは言わないようにねのお返しの視線が返ってきた。はいはい任せて。とわたしは目の前のイケメンくんたちを後回しになに食べようかな〜とメニューを広げてるとぴっと人差し指で焼き鳥を指さされた。
「あ、俺これ食べたい」
「いいですね!わたしも焼き鳥大好きです!盛り合わせ頼んじゃっていいですか?」
「大丈夫」
「塩とタレどっちにします?」
「塩で」
「良かった!わたしも塩の方が好きなんです」
素材の味がより増すというか、やっぱお酒に合うのは塩だよねとにこにこしてると泉さんがそんなわたしを見て笑ってた。え、なにか変なこといってたかな?不安げな顔が伝わったのかごめんごめんと咳払いをする。
「いや、さっきの浜田じゃないけど、可愛くてよく食べる子いいなあと思って」
「え、」
イ、・・・イケメンは言うことが違う。てかこれって泉さんももしや今日のこの合コンで彼女をみつけに来たあれなんだろうか?だとしたらこんなご飯目当てできた女がきてさぞかし残念だろうに本当にごめんなさい。と思いながらも可愛いなんて久しぶりに言われて悪い気はしないなと照れながらありがとうございます・・・と伝え、とりあえずどうしていいかわからなくなりメニューを閉じて1杯目がくるのを待った。
それから自分たちの部署の話をしたり、趣味の話をしたり、まさかの二人が高校時代同じクラスで野球をしていたことを聞き、浜田さんが留年したこともこっそり泉さんが教えてくれた。わたしたちが同い年だってこともあり、敬語もなし!呼び捨てでいいよと話になった。さすがにすぐには呼び捨てできなかったのでくん付で呼ぶことにはしたけどなんだか仲良くなれたみたいで嬉しい。
「ま、こいつは一個上だけど同い年みたいなもんだから気にせず浜田って呼んでやって」
「泉ひでえ〜!けどみんなほんと気にせず浜ちゃんって呼ばれてるからそう呼んで!」
「じゃあ、浜ちゃんで!」
まっさきにそう呼ぶ友子があざとかわいくて傍から見ても浜ちゃんがでれえっとした顔になったのが分かったからわたしと泉くんは顔を見合せて笑った。しょうがないから友子のために人肌脱ぐとするか〜!
「せっかくだしわたし泉くんともっと喋りたいので横いってもいいかな?」
「え、名前?」
小声で、頑張りなと伝えるとわたしの意図が分かったのかありがと〜!とジェスチャー。それを見て泉くんも察してくれたのか、おら浜田あっちいけ!と足でつついてた。
「なんかごめんね、合わせてもらっちゃって」
「いやここだけの話今日実は浜田が中村さん気になるっていうから頑張って声掛けたみたいで」
「えっ!そうなの?!友子も、浜田さん気になってるって今日きたんだよ」
「え、まじ?!」
マジでいい感じなんじゃん。とひそひそ呟く泉くんとの距離が思ったより近くてなんか急に恥ずかしくてこぶし一個分少しだけ離れた。
〇
もう気がつけば飲み放題の時間も終わってお会計を知らせる店員さんがきた。
「いくらだった?」
「苗字さんたちはいいよ!」
「え、悪いよ」
「今日きてくれたお礼。もしよかったらまた行こう!その時は半分払ってもらおうかな」
スマートな浜田さんの言葉に流れるままお会計しにいった二人に呆気を取られてると友子がほんと、今時居ないよあんないい人!としみじみ浜田さんにうっとりしていた。
「あのね、お願いがあるんだけど」
「どうした?」
「わたし!このあと浜ちゃんを二次会に誘おうと思うんだけど・・・」
「いいじゃん!誘いなよ」
「二人でいってきてもいいかな?名前は泉くんと帰ることになると思うんだけど大丈夫そう?」
「もちろん。結構二人がいい感じの時に仲良くなったし」
「名前ありがとう〜〜〜!!!」
店の外にでて、再度ごちそうさまですとお礼をいえばさっそく先程言っていたことを友子は勇気をだして浜田さんを2軒目に誘っていた。
「そういうわけなんだけど、えっと泉たちもくる?」
「行きたいんですけどわたしこの後みたい番組あって帰りますね。今日はありがとうございました!友子のことよろしくお願いします」
「俺もパス!帰ってやらなきゃいけないことあるから」
「おっけ〜!また4人でご飯いこうね!じゃここで」
浜田さんの横で友子が顔の前で手を合わせてありがと!と、頭をわたしと泉くんに下げた。上手くいくといいなあと二人が遠くなるまで背中を見つめた。
「あの、今日は色々とありがとう。さっきも合わせてもらっちゃって・・・。2軒目いきたかった?」
「いいよこっちも浜田がにやにやしてるの見れてからかう材料増えて楽しかったし。2軒目は別にいいんだけど、よかったら駅まで一緒に少し歩かない?」
「もちろん!」
お酒を飲んでポカポカしてるとはいえ季節は11月、びゅうっと顔をかすめる風はとても冷たくて思わずくしゃみが出た。
「あー、・・・よかったらマフラー使う?」
「いいよいいよ!泉くんが寒くなっちゃうし」
「俺体温高いから大丈夫、こっち向いて」
「あ、・・・うん、じゃあお言葉に甘えて」
するりと自分の首から黒のフリンジが付いたマフラーを抜き取るとほんのり熱をもっているマフラーがわたしの首に巻かれた。優しくきゅっと最後に結んでもらったら思ったよりマフラーが大きめだったからか口元が隠れて一気に首周りが暖かくなった。軽く洗剤のいい香りがして思わずどきどきして目を閉じてしまう。
「あったか〜!ありがとう」
「ん、どういたしまして。その代わりといっちゃなんだけど」
「うん」
「良かったら今度、二人でご飯いかない?」
泉くんの少し緊張したような声色にわたしまで少し緊張が移ってしまいそうで頭がくらくらする。断る理由なんてどこ探しても見つからなかった。
「もちろん」
どうやらお昼を奢らないといけなくなりそうなのはわたしの方かもしれない。
11.29 happy birth day izumi!