you just gotta find the ones worth suffering for.



「栄口本当にありがとう!」

「全然いいよ」

「今日は居なかったみたい」


栄口に家の前まで一緒に帰ってもらって、付近を少しみたけど今日はさすがにいなかった。ここに誰かいたら怖いよと同情してくれた。昨日はさすがに背筋がぞっとしたから本当に栄口にお願いしてよかった。じゃあ、と栄口が行こうとしたら携帯の着信音が鳴り響いて帰ろうとしてた栄口の足がピタリと止まった。


「もしかして例の人?」

「う、うん」

「とりあえず無視しときな」

「そうだね・・・そうする」


暫くすると着信音が途絶えて、一件のラインが届いた。開かずに通知から見るとそこには今日はいつもの電車乗ってなかったんだねと届いていた。栄口もその内容をみたのかわたしと目が合って固まってた。


「え、ほんとにやばいじゃん」

「すごい今更なんだけど」

「うん?」

「こんなことに巻き込んじゃってごめんね」


一緒に帰ってもらったのはいいものの今日もし、あいつがいて栄口になにかあったとしたらって考えたら実際はただの隣の席なだけの栄口にとったらすごく迷惑な話だろう。


「何言ってるの、逆に知ってて苗字になにかあったらそっちの方がいやだよ」


俯くわたしの頭をそっと撫でてくれて栄口はにこりとすごく優しい顔で笑った。内心本当にこわいしこれからなにかされたらどうしようとか一人の時に出会したらどうしようとかずっと考えて昨日はあまり寝れなかったから、栄口がいてくれて本当に良かった。ぽたりと我慢してた涙が目からこぼれ落ちると栄口がぎょっとして、わたしの頭から手を離した。


「ご、ごめん!嫌だったよね?!」

「ちが・・・っ!栄口が、」

「俺が?」

「栄口が、優しすぎるからだよ」


鼻をすすって栄口を見たらなんとも言えない顔して困ってたから思わずふふっと笑いが溢れた。じゃあ、と再度バイバイをして栄口の背中が見えなくなるまで見送る。ぽかぽかと暖かくなって玄関で立ち尽くしてしまった。玄関ぼーっとしてると奥から早く入りなさいよ!とお母さんの声が聞こえて慌てて靴を脱ぐ。


「ねえ、お母さん」

「どうした?」

「ちょっと、色々教えてもらいたいんだけど」

「なに?」

「あの、明日お弁当を作りたいんだけど」

「え?自分の?」

「そう」


なんだかにやにやしてるお母さんに、なに?とじろりと睨むとさらにお母さんは笑って


「てっきりさっきまでいた男の子にあげるのかとおもった」

「!!・・・見てたの?」

「見えたんだよ、彼優しそうな子じゃない」


お母さんのその言葉にまた胸の奥がじんわりあたたかくなって、うんすごく優しいよ。って返した。