家に居ても何もすることが無かったから近所にある書店へと最近運動不足だから歩いて向かうことにした。最近暑くなってきて薄着になる機会が増えたからちょっとはダイエットしないとな〜。

「いらっしゃいませ〜」

入口を入ってすぐに目が合った店員のお姉さんに少し会釈だけをして雑誌コーナーへ行くと同じクラスのよく見慣れた泉が居た。驚かしてやろうと後ろにこっそり回ったはいいけど開いていたページが丁度女の子のギリギリ見えるか見えないかの際どいお色気ページで驚かす事も忘れてつい「うわ!」と声が漏れてしまった。思ったよりも大きい声がでてしまったから雑誌を読んでた泉の肩がびくっと揺れてすぐにわたしの方へと振り向いた。


「・・・は?・・・苗字!?」

「コンバンワ、まさか泉がこんなに堂々とお色気ページを見てるなんて意外すぎて驚かす気もなくなったわ」

「ばっ、ちっげーよ!!」

「いいっていいって!毎日部活だもんね、男だらけだもんね、そりゃ見たくなるよね、うんうん。分かるよ」

「人の話を聞け」


そう言って泉が拳を握るポーズをしたから慌てて謝る。よく浜田が泉にやられているのを見ていると浜田はいつも痛いんだよって涙目でわたしに助けを求めにきたことがあったから泉は可愛い顔してオソロシイ。明らかに女子相手でも手加減してくんなさそうなんだもん。


「男モンの雑誌の合間に入ってる1ページだろうが」

「のわりにはじっくり見てたように見えたけど気のせい?」

「・・・うっせえな!」


泉もこんなんだけど一応男の子なんだなあ〜と思いながらじとっと泉を見ると顰めっ面をしつつも少し顔を赤らめながら見ていた雑誌をガサツにガコンと戻した。ちょっと、売り物なんだから丁寧に入れなさいよね。


「別にわたしがいても見ててもいいのに」


少しにやついた顔で言うと泉はバコっとわたしの頭を叩いてきてじんじんと痛む頭をおさえる。・・・やっぱり女子が相手だろうが手加減しないやつだった。


「そういや苗字何しにきたの?」

「暇だから来たんだけど泉がへんてこなページみてたから予想以上の暇つぶしになったよ、ありがとう」

「てめっ」

「うそうそ!」


それからそのままの流れで2人でぶらぶらしてたけど特に借りたいDVDも漫画も見つからなくてそろそろ帰ろうかなぁと口にするとじゃあ俺も帰ろ。って言葉が返ってきてなんだかんだ一緒に見て周ってくれていた泉を見て優しいところもあるんじゃん、なんて口にはしないけど口元が少しだけ緩んだ。


「苗字ん家ってここら辺なの?」

「そうだよ〜、歩いて15分位かな」

「こんな時間に歩いて来たの?」

「最近運動不足でさあ〜」

「確かにその二の腕はちょっと」


さっきの仕返しかと言わんばかりにわたしの二の腕をぎゅうと掴んでにやりと笑う泉は心底性格が悪いと再確認して二の腕を掴んでる腕をペシンと叩いて足を踏んづけてやった。予想以上に痛がっててなんだか可愛くて思わず怒ってる事も忘れて吹き出してしまったら泉が意外にも笑顔で頭をくしゃりと撫でて「笑いすぎ」って言うから少しだけどきっとしてしまった。ほんと、少しだけだけど。


「泉のくせに!」

「はあ?なんだよ急に。つーか送ってくわ」

「へ」

「暗いんだからあぶねーだろ」


一応女だしと意地悪く笑う。余計な一言がなければここは惚れてしまうところなのに。ダイエットのことは少しわすれてありがたく自転車に跨ると、ちゃんと掴まれよと声をかけられて、泉のお腹あたりに腕を回して男の子とこんなにくっつくことなんてなかったからゆっくり漕ぎ出してくれた泉にどきどきした事も、ちらりと街灯に照らされた泉の耳がほんのり赤い事も当分はわたしだけの秘密にしておこうと思う。