2日連続で寝不足だ。少ししか寝れてないせいか瞼が重い。携帯を開くと瞬くんから少しだけ会えないかな?とラインが入っていた。昨日のことがあったからわたしは大体なにを聞かれるか覚悟をしなきゃいけないな。了解の返事を打つとすぐに待ち合わせの場所とかが送られてきていそいそと準備を進める。鏡を見ながらなんて酷い顔なんだろうといつもより念入りに化粧をする。

待ち合わせ場所は駅前で、瞬君はもうきていた。


「早いね、待たせてごめんね」

「ううん、ちょっと早く来すぎただけだから」

「今日はどこか、いくの?」


少しの沈黙のあと、あのね。と口を開いた瞬君に本当はどこかいく為に呼び出されたんじゃないことくらいわたしにも分かるのに。


「・・・昨日一日誰のこと考えてたの?」


瞬くんの顔を見上げると気まずそうな顔をしていた。そう問いかけられてそんなのもちろん瞬君のことだよ、なんて当たり前の言葉が出てこなかった。何も言えないままのわたしを見かねて瞬君は・・・そっか、分かったと哀しそうな声で呟いた。ごめんなさい、そう言おうとしたら先に瞬くんの声で遮られた。


「別れよう」

「・・・あの」

「俺から、振ったんだからね」

「・・・え?」

「だから名前は、なにも悪くないよ」

「し、瞬くん」

「これ以上一緒に居ると気持ちが揺らぎそうだから」


言い終わったと同時にわたしの背中を押して、短い間だったけど楽しかったよ。そう後ろで呟かれ、わたしもなんて間違っても言えなくて、瞬くんの優しさが痛いほど伝わってきて好きになれなくて、こんな彼女でごめんね。

家に帰ってからはただひたすらベットでぼーっとして、天井を見つめていた。情けない。誰かを傷付けて初めて自分の気持ちに気付くなんて。


「・・・わたし、孝介が好きなんだ」


ぽつりと静かな部屋に響いた言葉は思った以上に自分の心にすっと入り込んできて、今まで我慢してたものが一気になくなっていく感覚だった。ぽろぽろと零れる涙を拭くこともせずに、ただただ泣きじゃくった。







次の日、昨日よりも更に悪化した私の顔は見るに耐えかねる状態だった。二重がおかしい、保冷剤で冷やしてるとお母さんに「うわ!アンタどうしたのその顔」とびっくりされた。


「昨日夜ご飯食べずに寝てたんだから朝ちゃんと食べなさいね」

「・・・はぁい」

「じゃあお母さん仕事いくから」

「ん〜、行ってらっしゃい」


キチンと用意されてるご飯をみて、お腹がぐぅと鳴った。人間どんな状況にいてもお腹は空くんだな。なんて当たり前のことを考えて憂鬱な学校へと足を運ぶ。
学校へ着くと友達にも笑われてなんだか散々だ。友子にこの土日であったことを言うとそれはもうびっくりされた。この顔になるのも納得だわ、って励ましてはくれたけど心のもやもやが晴れてくれるわけもなく。


「うわ、何その顔」

「・・・こ、孝介」


何事も無かったかのように話しかけてくる孝介に、少しだけどぎまぎしながら腫れぼったい目を手で覆い隠す。


「泉くん、この子別れたんだってよ」

「ちょ、ちょっと、友子!」

「・・・は、」


慌てて友子の口を塞ぐも、時すでに遅しとはこの事で孝介は目を丸くして固まってしまった。


「まじ?」

「・・・」

「・・・なんで」

「孝介には関係ない」

「・・・あっそ、」


少しイラッとしたのか何も言わず席へついた孝介をみながら今更孝介が好きだなんて、言えるわけもないのにちくちくと胸が傷んだ。