大人になって周りがどんどん結婚していき、子供が出来たと報告を受けるたびにみんなもう高校生のままじゃないんだなあとしみじみ実感させられる。その点わたしは結婚もしていなければ彼氏も居ないし子供なんていったらもっとずっとずっと先の事なのだろうな。生活感のない部屋をぐるりと見渡しながらじんわりとした汗をパタパタとタオルであおぎながらベッドで項垂れる。わたしだって、彼氏がほしい。そりゃほしい。もういい歳だし出来れば結婚を前提にお付き合いしてくれる人ならなお大歓迎だ。今できれば冬も寂しくないだろうなあ、とそんなことを思いながら天井を見つめているとクラスで仲がよかった子から電話がかかってきた。


「もしもーし」

「あ、もしもし?久しぶり〜!元気だった?」

「元気だよ〜、どうした??」

「近々高校のクラス会でもやろうかなってみんなで話してるんだけど名前はこれそう?」

「仕事の都合にもよるけど行く行く〜!」

「ほんと?結構人数集まってるみたいだからまた連絡するわ」

「わかった。待ってる」


そう言って友達はじゃあと電話を切った。誰がくるのかな〜と久しぶりにクラスの面々を思い出しているとふと彼は元気にしているだろうか、とLINEの友達欄をスクロールして名前を探し出す。泉 孝介。高校の1年の終わりぐらいに席が近くなりそれからクラスの中ではわりと仲が良い方だったとは思う。


「いた」


久しぶりに見るアイコンは高校時代から変わってなくてどこか懐かしくなった。野球に集中している彼がいつもキラキラと輝いていてわたしはそんな泉が羨ましかったし、恋愛は別にして泉のことを好きだった。泉はどう思ってるかなんて知る由もないけど。卒業して以来仕事に追われ、高校のときとは違いどこか遠くの世界にいってしまったみたいだな、なんて変わらないアイコンを見ながらすこしだけ切なくなった。

あの電話から数日後[日程は来週の土曜日はどう?]友達からそうメッセージが入っていたのに気づいたのは仕事終わりのこと。大丈夫だよ、と返事をして足早に家へと帰宅する。









クラス会当日、集合は6時からだったけど仕事終わりに一回家に帰り準備をし終わった頃にはもう9時になりそうだった。卒業以来みんなに会うのは久しぶりだからなんだかどきどきするな〜。携帯をみると友達からで、10人近くは来てるよ!名前も早くきてね!と楽しげな写真が一緒に送られてきた。もうすぐ行くよ、と慣れた手つきで返事をしながら最近買ったばかりのサンダルに足をいれ、外に出て外灯に照らされるとサンダル焼けが少しだけ目立ってるような気がして少しだけ恥ずかしい。


「お、久しぶり」


集合場所の居酒屋に入った瞬間丁度靴箱のところに泉が立っていた。大人びた格好をして、髪型も少しだけワックスでまとめている高校の時とは違う泉に少しだけどきっとした。


「泉、久しぶり!」

「今来たとこ?」

「そう、仕事終わりだったから。泉も?」

「おー、俺も今来たとこ」

「1人で入ってくの不安だったから泉に会えてよかった」


へへ、と笑うと泉はみんな知り合いなんだから平気だろと呆れた顔で笑ってくれた。2人でみんなの居る場所にいくと空いてる座席にそのまま流れるように泉と隣に座り込んだ。懐かしい〜!久しぶり〜!元気だった?とお決まりの言葉を口々に言いながら、わたしたち2人が最後のメンバーだったようでもう1度みんなでドリンクを頼んで乾杯をはじめた。


「みんな結構呑んでるな」

「うちら最後だったもんね、そういえば仲良かった田島とか三橋とか浜ちゃんとは連絡とってるの?」

「おー、たまにな!今日はみんな忙しいってさ」

「そうだったんだね」


話しながらぐびっとビールを飲み干す泉の上下する喉仏を見てなんだかどきどきしながらわたしも一気に飲み干した。緊張を隠すために普段あまり飲みに行かない反動か久しぶりに飲めると、わたしもついつい飲みすぎてしまっていた。11時を周った頃には10人近くいたメンバーも何人か帰っていき、半分くらいに減っていた。主催してくれた友達が「人数減ったしどこか場所変えてのもーよー!」と提案をし、二次会行く人と解散する人でわかれ今いた居酒屋をみんなバラバラと出ていってる中わたしもいこうかなあ、とふわふわする頭でゆっくりと隣をみた。


「泉は、いく〜?」


喋りかけるなり、泉は怪訝な顔をしながらわたしを見つめてなにも返事せずにみんながいる方へと行ってなにかを言ってから店員さんに「お水だけ一杯もらっていいですか?」と声をかけ、受け取ってからわたしの隣りにもう1度腰掛けた。


「とりあえずこれ飲んで」

「ありがと〜」

「飲んだら出るぞ」


そう言ってわたしのカバンを手に持ちもう片方の手でわたしの腕を掴んで持ち上げてくれた。座ってる時は気づかなかったけど立ち上がると一気に頭にアルコールがのぼりよれよれと泉に掴まる。


「飲みすぎ」

「へへ、ひさしぶりに外に、のみきたから、つい」


あまり呂律の回らない口で泉にありがとうと言うと、そっけなくおー、と返された。お店を出るともうみんなの姿はなくみんなどこにいるのかなあなんて考えてたらふらふらと見渡すわたしに、酔っ払いと声をかけ手を繋いでくれた。


「みんなには俺ら行かないっていっといたから」

「え〜!なんで??いこーよお」

「自分の状況よく見ろ。行けないだろ」

「そんなことない、」


行けるよ、と言おうとした瞬間気持ち悪くなってその場にしゃがみこんでしまったら、ほら見ろいわんこっちゃないって顔で泉が大丈夫か〜?と背中をさすってくれた。わたしはこんなにお酒が弱かったのか、それとも今日は飲みすぎてしまったのか?と考えながら泉の声が遠くなっていく気がした。