雪が降り頻る。ざくざくと雪の上を歩けば虚しくわたしの足音だけが鳴り響いた。高校時代は楽しかったと口々を揃えていうのはきっとあんなに熱い三年間を過ごしたからなのだろう。泉がわたしとは別の大学にいくと知ったのは卒業間近だった。恋人同士なんかではなかったけどお互いなにも言わずに手を繋いで歩いた去年の冬、きっかけはもっと前からだったはずなのだけれど泉を好きだと再認識したあの日、きっとわたしは誰よりも泉に恋をしていた。クラスが違かったわたしたちは卒業の日ばたばたとしていて結局想いを伝えるどころか会うことすらなく西浦を卒業していった。

『…―駅前、大変滑りやすくなっておりますのでお気をつけてお降りください。』

わざわざ遠回りまでして快速じゃなく各駅に乗るのは泉が降りる快速では追い越してしまうここの駅を通りたいから。一回でいいから泉ともう一度会ってあのときのわたしの気持ちを伝えたくて会える確率なんてたかがしれてるけど大学に入った今もわたしは後にも先にも泉しか頭に残っていなかった。我ながらほんとばかだなあって思う。


「やっぱり今日も会えないか」


ぼそっと呟くとわたしの事情なんてこれっぽっちも知らない電車はがたごとと時間通りにまた次の駅へと進んでいった。

今日は雪がすごい降ってたから帰りは快速に乗ろう。いつもは部活だってわかっててももしかしたらって可能性を捨てきれなくて各駅に乗ってしまうけどこの雪だから帰りが更に遅れてしまうのは困る。滑らないように改札口の前へと足元に注意しながら歩いていたらどかっと誰かにぶつかった。


「ひゃ、ご、ごめんなさい!」

「…おす」

「…へ」


がばっと頭を下げて謝ると予想とは裏腹の言葉が返ってきて下げた頭を上げるとそこにはずっと探していた顔があった。


「…泉、どうして」

「去年のあの日もこんな天気だったな」

「え?、うん」

「手繋いで帰ったの覚えてるか」

「……うん」

「ん」


差しだされた手は一年前とは変わらない暖かさだった。涙でぐしゃぐしゃになったわたしを困ったように笑う泉は変わらない優しさでふんわりとわたしを包み込んでくれた。


「やっと会えた」