今日は朝からついていない。出勤する際に雨がざあっと降ってきてヒールがぐしょぐしょになったし洗濯物なんか今さっき干したばっかりだ。会社に着いたら滅多に怒らない先輩に怒られたり簡単な仕事もミスしてしまい更に怒られた。気晴らしにコーヒーを飲もうとしたら丁度詰め替えが切れていたし小さな事も含めれば今日はたくさん嫌な事続きな日だった。今日の朝やっていた占いでは一位だったのに、やっぱりあそこの番組の占いは嘘つきだ。
「あ、おつかれー」
仕方がないから、会社に一ヶ所だけある喫煙所プラス自動販売機があるとこへと駆けていったらそこには同じ部署の先輩の水谷さんが居た。
「おつかれさまです」
「苗字さんがここに来るなんて珍しいじゃん」
「部署のコーヒー切れちゃって」
「あ、そうなんだ!じゃあここは俺が奢ってあげちゃう」
「いいですよそんな!」
水谷さんはにっこり笑って自分の飲んでいた飲み物をガシャンとゴミ箱に捨てて自販機の前に立ちガコンと新しいコーヒーを押して「はい」とわたしの目の前に差し出した。
「あ、ありがとうございます」
「それになんだか朝から元気ないみたいだし」
「えっ」
「俺も今日は朝からこわーい課長に呼び出されてブルーなの」
「…水谷さんもミスするんですね」
「えー!俺ミスばっかりだよ!」
高校時代から変わらないの、と眉毛を下げて笑う水谷さんはやっぱり可愛かった。同じ部署と言ってもそんなに交流がある訳ではなく、ましてや水谷さんは然り気無く部署内で人気がありわたしもいいなあと思ってはいたもののこうして話す機会には巡り会えなかったからわたしの中での水谷さんは仕事をなんでもこなすしっかり者のイメージだった。
「そういやもうお昼だね」
「あ、はい」
「よかったら、一緒にどお?」
チャリ、と車のキーを見せる水谷さん。まさか誘われるとは思わなくて持っていたコーヒーを落としそうになってしまい慌てていると水谷さんは隣でにこにこ笑っていた。(……恥ずかしい)直ぐ様二つ返事でオーケーを出すとさっき以上に笑顔になっていた。
「よかったあー!断られたらどうしようかと思ったよー」
「断るわけないじゃないですか!」
「実は俺、ずっと苗字さんと話したかったんだよね」
「…へ」
「これからよろしくね」
そう言い微笑む水谷さんの顔は可愛い顔じゃなくてオトコの人の顔だった。朝の番組の占いが当たらないなんて言ってごめんなさい、どうやら今日わたしはやっぱり一位であってたみたい。