「…も、ほんとサイアク」
こんな風にされるようになったのはいつからだろうか。なにか小さなミスをする度に課長に呼び出されては軽いセクハラをされる。つい今さっきも注意を促すと同時に触られた。運良く他の人からの呼び出しがあったため間逃れたけど日に日にエスカレートしていくその行為は吐き気を催すくらいだった。新入社員のためこんなことを相談できる相手も居ないしもうほんとどうしよう。
「はあ、」
トイレ付近の壁に項垂れたように寄りかかると精神的からくるものなのか気持ち悪くなってその場にしゃがみこんでしまった。…早くオフィスに戻らなきゃまた怒られてしまう。でも動けない、と思ったと同時にぐん、と腕を引っ張られた。「え、」と顔を上げるとそこには他の部署の先輩がいた。
「あの、大丈夫ですか?」
「え、あ、はい」
「はい、ってそんな具合悪そうなのに大丈夫じゃないだろ」
「え、いや、あの…」
「とりあえず歩ける?」
「…はい」
そういうと頬にソバカスのあるその人はわたしを軽く支えながら近くにあるソフアーに座らせた。ネームをちらりと見たら隣の部署の泉さんって名前らしい。
「新入社員だよな?」
「そうです」
「なんかあったら俺に言えよ」
「え」
「あそこの部署みんな絡みづらいからなー」
慣れるまで大変だぜ。と苦笑したように笑った。なんだか泉さんの優しさが嬉しくて想わず堪えてたなみだがぽたぽたとスカートにしみをつくる。
「ありがとうござい、ます」
そういうと泉さんはわたしの頭をがしがしと撫でて「おう、がんばれよ」と励ましてくれた。再度お礼を言い部署に戻ろうとしたら泉さんに引き留められた。
「これ、俺の名刺だから」
受け取って裏を見たらそこには泉さんの携帯番号が書かれていた。「あの、」と顔を上げると
「気になるやつの弱ってるときに付け入るなんてずるかった?」
そうにい、と笑っていう泉さんにまんまとわたしは付け入られて明日からもまた頑張ろうと思えたから不思議だ。