幸せに底があるなんて誰が言ったの?
はっと目を覚ました。携帯の時刻を見ると夜中の3時過ぎで、なんとも目覚めの悪い夢を見ていた。はあ、と一息ついてラフな格好になりうやむやした気持ちをどこかへやろうとコーヒーを飲もうとしたが生憎切れててコンビニまで行くことにした。よれた化粧を少しだけ直してコンビニへと向かう。と、そこにはよく見慣れた姿の金髪の彼が働いていた。ここのコンビニに深夜くることはなかったため今の今まで浜田には一回も出会さなかった。向こうもわたしがこの近辺に居るのを知らなかったのかいらっしゃいませとこちらを向いた瞬間驚いた顔をしていた。苗字と呼ばれ苦笑しながらレジの近くにある缶コーヒーを手に取り浜田のレジにことんと置く。


「久々だなー」

「お久し振り。ここでバイト?」

「はは、なかなかやりたい仕事みつかんなくって」

「そっか」

「そっちは今なにしてんの?」

「わたしはまあ、普通の会社員やってる」

「へえー、……泉とは連絡とってる?」


ぴっとレジを打つ音だけ残して無言になる空気。あんな夢を久し振りに見たせいかなんでここでも孝介に支配されなきゃいけないのかじとっと浜田を睨んだら気まずい顔をして、130円になります。と缶を手渡してくれた。


「……俺四時で上がりなんだ、ちょっとまっててよ!」


わたしの返事も聞かないまま52分を指している時計をみてしょうがないなと入口の前でコーヒーを飲みながら待つことにした。


「わるい、お待たせ」

「ん、おつかれー」

「泉さ、」

「うん」

「まだ苗字のこと好きだよ」


飲み終わった缶コーヒーを手からからんと落ちるとざわり、と心が揺れた。きっとわたしの顔はひどい顔をしているのだろう視界がグニャリと揺れた。