水谷とお姉さんと明けまして


「あけましておめでとう!」


恒例の挨拶で始まる新年。我が家もまたその恒例に則った家庭なのだけれど。そんな一日から一日過ぎ、正月気分ももうそろそろ終わりだなあともうすぐ野球の練習が再開するんだとぐっと気合を入れつつご飯を食べ終わった俺は居間にあるソファーにどかっと座ってお笑い番組に目を向けた。と同時に我が家に遊びにきている彼女をちらりと横目でみた。(ここでいう彼女は恋人の彼女ではなく女の人を表す彼女なのだけれど)


「じゃあ4日ね!」


そう嬉しそうに話すのはねーちゃんの友達。ここ最近よく家に遊びに来る彼女はそう、俺のどストライク。年上に見えないあどけさに部活帰りねーちゃんには言ってもらったことのない「お疲れさま」にまんまと心奪われてしまった。…俺ってば単純!


「じゃ、お邪魔しました」

「じゃねー」

「あ、文貴君もバイバイ!それと明けましておめでとう」

「へっ!あっはい!今年もよろしくおねがいします!」


ぼーっと、居間でテレビを見ていた俺に挨拶をくれるなんて思ってもみなかったから変なトーンになってしまってかあ、と上がる体温とともに汗がつうと背中を流れた。彼女はいつも通りかわいい笑顔で俺を見てくすっと笑って手を振って俺の家のドアをしめた。いつもは俺自分の部屋にいるからあんま関わったことないんだよなあ。バタンと閉まるドアをどきどきと見つめていたらねえちゃんに「文貴きもい」なんて言われてしまった。でも今日はきっといい日に違いない。


「ねー、あの人4日にくんの?!」

「うん」

「うっそ!!ホント?!」

「文貴うるさあーい」

「ごめんごめん!」

「本当こんなやつの、どこがいいんだか」

「へ?」

「わたしからの誕生日プレゼントは高いんだからね!」


そう言ってにんまり笑うねーちゃんの言葉の意味を知るのはどうやら俺の誕生日になりそうだ。