「うまそうっ!!!」
孝介ママが帰ってきてお父さんが帰ってきたときにも同じような反応され孝介くんと笑いあった。食卓にはずらりとおいしそうなご飯が並べられていきわあ、と思わず声を漏らしてしまった。わたしはいつも一人で食べてるからこんな量のご飯を初めて見たのと恥ずかしながら手抜き料理ばかりだったから嬉しい。実家でもお母さんとお父さんとわたしの三人だけだったからこんなに多くの食事が出るのは新鮮だった。男の子だし野球もしてるとなればそりゃたくさん食べるよね。料理に見とれていると孝介くんが冒頭の言葉を発した。
「家でもやってるの?ソレ」
「おー!しがぽに言われてから習慣になった」
「へー」
「苗字もやれば?」
「う、うまそうっ」
「ばっか、もっとでけえ声でやらないと」
「うまそう!!」
投げやりに言うと満足したようににんまり笑ってた。孝介ママはそんなの女の子にやらせないの!と孝介くんをこづいたから思わず笑っちゃった。初めて孝介くんの家族に会うのにこんなにも優しくしてくれてなんだか泣きそうになる。いつも一人で食べてる分孝介くんの家族の優しさに触れてお母さんとお父さんが恋しくなってきちゃったな。
「さあ、食べましょうか」
「いっただきまーす」
「うま!」
「名前ちゃんどう?」
「おいしいですっ!」
それからたくさん食べたあとにケーキまでいただいて孝介ママの誕生日をお祝いした。本当にせっかくの誕生日なのにわたしなんかが居てよかったのだろうか。そう思っていたのが顔に出てたのか孝介くんが今日はきてくれてサンキューな、といいタイミングでそっと言ってくれてきっと孝介くんなりに色々気をつかってくれたんだなあとなんだか申し訳ない気持ちと同時に心臓が痛くなる気持ちも一緒に出てて、あれ、これ、なんだ?
「ゴチソウサマでした!!」
かちゃかちゃと食べたものをまとめてお礼にと全部綺麗に洗わせてもらった。料理の手伝いをしなかったからこのくらいさせてください!と断る孝介ママを半ば強制的に説得させた。
「ありがとうね」
「いえ、こちらこそほんとに美味しかったです」
「なんだか娘ができたみたいで嬉しいわ」
うちには男しかいないからね。ってリビングでもうくつろいでるお父さんとお兄ちゃんをみてくすくす笑ってた。
「じゃあ俺苗字送ってくっから」
「遅くまでお邪魔しました!」
「またいつでも来てね」
「帰り道変なことすんなよ」
「兄貴うっぜ」
ありがとうございました!ともう一度挨拶をして孝介くんがチャリの後ろを指差して、乗ればというのでお願いしまーすと言って荷台にまたがる。うわわ、背中意外とおっきいんだ。一人でどきどきしていると孝介がわたしの手を引っ張ってあんま後ろのっぺってると漕ぎにくいんだけどと言ったと同時にわたしの手を引いて自分の背中にわたしの腕を這わせた。いわば孝介の背中に抱きついている状態で、一気に心拍数があがる。
「ん。これならおまえも安全だし漕ぎやすい」
「う、うん」
あまりにも突然だったから顔が真っ赤になる。夜だし後ろだから孝介くんに気づかれなくてよかった。控えめにぎゅうとすると一瞬孝介くんの肩がびくっとしてまたこぎ直した。
「うちこっちらへん?」
「うん、そのまま真っ直ぐ」
「はいよ」
孝介くんの背中にもたれながらどきどきする心臓に気づかれないように少しだけ掴んでる力を強めた。
ああ、わたし孝介くんが好きだなぁ。
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