今日は孝介くんと全然目も合わせれなくて、放課後になるのがどこか待ち遠しかった。チャイムが鳴って学校が終わる合図が鳴ると、悠くんたちは一目散に部活〜〜〜!!と叫んで教室を出ていった。孝介くんはいつも通り呆れながらその後に続いて教室から出ていった。少しホッとしたような気持ちでわたしも昇降口へと向かった。


「あ、苗字さんだ」


下駄箱の近くにいくと、後ろから声をかけられ振り向くと野球部の男の子だった。


「あっ、えーっと、栄口くん」

「よく名前覚えてたね!」

「転んだところ助けてもらったから」

「田島にいつも抱きつかれてるの?」

「ちがうちがう!あの時が初めてだよ!!」


必死に否定すると栄口くんはにこにこしながら、良かった。と言ったから、なんで良かったんだろう?とはてなマークを出してると栄口くんは慌てたように「ほら、田島スキンシップすごいから!彼氏でもいたら大変じゃん」と少し顔を赤くしながら焦っていた。


「彼氏、いないから大丈夫、です」


そう答えたけれど、頭にはずっと孝介くんのことが浮かんでいた。彼氏じゃない。昨日自ら断ったはずなのに、それをずっとずっと後悔している自分がなんだか情けなかった。


「居ないんだ!あ、ならさ」

「?」

「よかったら連絡先、交換しない?」

「いいよ〜!」


ほんとに?やった!と喜ぶ栄口くんはなんだか可愛かった。


「あ、部活の時間やばいから番号だけ口頭で教えて!」

「わかった!」


忙しなく携帯に打ち込んでから、じゃあ部活終わったら俺からメッセージかなんか送るね。と駆け足でグラウンドに向かっていった。部活頑張ってね!とだけ伝えるとなんとも爽やかな笑顔がかえってきた。栄口くんは癒し系だな〜、と少し落ち込んでいた気持ちが和らいだ気がした。

家に着くと、ベットのすぐ側に孝介くんの生徒手帳が落ちていた。昨日寝ちゃった時に、落ちたんだな。とまだまだ新品の状態のそれを手に取る。裏に載ってる孝介くんの入学式の顔写真はまだ髪の毛も短くて今とは別人みたいだ。


「・・・ごめんね」


そう呟くとぽたぽたと情けない涙が生徒手帳に少しだけ落ちてしまった。