38度1分・・・。これは完全に風邪を引いてしまった。ピピッと体温計が鳴ったのを確認して体温を見て驚いた。朝から寝起きがどうも優れなくて体温を測ってみたら案の定風邪を引いていた。この熱じゃどうしようもないなーと思い先生に電話を入れる。こういう時一人暮らしだとどうにも不便でしょうがない。「お大事にな」と先生が言ってくれてなんだか無性に寂しくなった。風邪を引くとどうもメンタル面が弱くなって仕方がないけれどわたしの力ではどうにかすることが出来ない。具合が悪くて眠たいハズなのに本来なら活発に学校でわいわいしている時間なのでなかなか寝つけなかった。少し、お腹すいたなあ、とか今頃みんなどうしてるかなあとか・・・、


「孝介くんに会いたいな」


とか。目を閉じれば思い出されるのはあたたかい笑顔の孝介くんで。どうして風邪を引くと人肌恋しく成るのだろうか。


ぱちっと目を覚ましてふと携帯に目をやるといつのまにか午後の2時になっていた。寝れないと思っていたはずだったけど一回眠りにつくと寝れるんだなあとぼけぼけしながら携帯を見るとメールが三件と着信が一件入っていた。誰だろうと見てみると着信は孝介くんからでちょうどお昼休みになったであろう時間にかかってきていた。メールは友子からと悠くんとメルマガからだった。友子からのメールを開くと心配する文面だった。

『泉くん、心配してたよ。羨ましいな〜』

孝介くんがわたしのこと心配してくれてるっていう事はすごく嬉しいのに、同じ人を好きになってしまったという事実から目を背けてはいけないきがして更に頭が痛くなった。悠くんからはノート写しといてやるから安心しろよ!ゲンミツに!と書かれていて普段ノートとらない彼がとれるのだろうか、と心配になったけどその気持ちだけでなんだか胸がいっぱいだった。携帯の画面をずっと見ていたら更に熱が上がったような気がして誰にも返事をせずにもう一度毛布をがばりと被って眠りについた。










ピンポーン、と鳴り響くチャイムで再び目を覚まし、時計に目をやると針は9時をすこし過ぎたとこだった。こんな時間に誰だろう?少しだけ髪の毛を整えて玄関をがちゃりと開けるとそこには孝介が立っていた。えっえっ、わたし今すっごいすっぴんだし髪の毛ぼさぼさだし寝巻きだし!!とりあえず前髪を少し引っ張って整えるけど絶対に寝癖ついてる。


「うす、具合大丈夫?」

「う、うん!」

「うんって・・・顔色まだ悪い」

「そうかな」

「とりあえず、上がってもいい?」

「うん」


部屋に男の子をあげるのは初めてだったためもうちょっとまともな形であげたかったなあと思っても今さら遅い。部屋につくなり、孝介くんはベットで横になってろよ、と気を使ってくれた。本来ならちゃんとお出迎えしなくてはいけないんだろうけれど今はとてもお出迎えできる状態ではなかったためお言葉に甘えることにした。


「てか、いきなりきてごめん」

「ううん、むしろわざわざありがとう」

「これ」


がさりと手荷物の中から栄養ドリンクやら風邪薬とか適当なものがいっぱい入った袋を取り出してわたしに差し出してくれた。コンビニのだからきっと高かったんじゃないかな・・・と、心配すると「病人はんなこと気にしてんじゃねーよ」って一喝された。


「あとこれ田島から」

「あ、本当にとってくれたんだ」

「まあ途中で俺とか三橋もとったけど大半は浜田がとってくれた」

「浜田くん・・・」


とってくれたであろうノートを見ると悠くんの字はおろかたぶん8割は浜田くんの字なんじゃないかな・・・。と、未だあまり関わっていない浜田くんにごめん、と心のなかで謝っておいた。なんだかさっき起きたばっかりでまだ頭がぐらぐらしていて文字を見ていると再度頭がずきずきと痛みだした。


「ふー・・・」

「あっ、わりい、横になってていいから。てか俺そろそろ帰るし」

「・・・うん」


孝介は立ち上がってわたしに毛布をかけてくれて机の所にポカリスエットをことんとひとつ取り出してあとで飲めよ、と再度わたしのところに一旦腰かけて額にぴたりと掌をくっつけた。


「・・・!」

「やっばまだ熱あるわ、ちゃんと寝ろよ」


そういって頭を優しく撫でてくれた。熱があるせいなのかひさしぶりの孤独感となんとも言えない感情が胸の中で溢れだして今ここで孝介くんに帰って欲しくなかった。まだいてほしい。今、わたしは孝介くんを独り占めにしたいんだ。側に、いてほしい。気づけばわたしの手は袖を掴んでいてぼやけた頭のまま孝介くんを困らせると分かっていながらどうしても止められない感情をぶつけた。


「もう少し、いてほしい、です」