読書が趣味のあやクルは勿論のこと、体をレンタル中のクルークも読書をする人であったので趣味の一致。お互い知り合うのにそう時間はかからなかった。

趣味も似通ったものだったし、彼自身興味深い人だったからなおのこと彼に懐いた。
だいたい読書八割、会話二割くらいで緩やかに過ごしている。話しかけても読書に集中しているのか返事しなかったり、どもったり、視線を泳がせたりするから会話はあまり得意ではないみたいだ。

そんな彼だからそもそもとしてあまり話しかけては来ない。
読書がほんとうに好きみたいで真剣に読む様子や穏やか(どちらかとあえば無口?)なさまが綺麗だったし、図書館に来る本来の目的は読書であるのであまりに気にはとめていない。

読みたい本があったな〜なんて気分で図書室に赴き会えたらラッキー、みたいなかんじだ。
今日もそんなかんじでやって来、読書中の彼を見つけた。


「やあ、ひさしぶり」


「……ああ」

顔をあげたあやクルは瞳だけではなく顔もちょっぴり赤い。
いま来たばっかりなのかな。


「ここ座って良いかな?」


「…好きにしろ」


軽くお礼の言葉を述べてからあやクルと向かい合わせになるように座る。
さて読むかと本を積み目に入った群青の表紙を引っ張り出し開いた。


ぺらぺらと頁を進めていると、図書室に響く紙の音が私のものだけだと気づいた。
要するにあやクルさんまったく頁が進んでない。

どうかしたのかと顔を上げればぱちりと目線があう。
こちらを見てた。そして何か用かと問う前にまた本に目線が戻る。


よくわからないまま本に戻ろうとすると、ふと私の目の前の群青とあやクルの目の前の群青が重なった。
あ、同じ本だったんだ。


「同じ本だったんだね。気がつかなかったよ」


「…………」


「これ面白いね。あやクルもこういうの好きなの?」


「…嫌いではない」


「私は好きだよ。あやクルってセンスいいしから適当に選んだ本だっただけになんか嬉しいな、お揃い」


「……………」


返事はなく、代わりにむぅ…と不思議な音がした。
やっぱりあやクルは本から顔をあげないから気になって覗きこんでみたら、すごい反応の仕方をされた。しゅばっ。
それに伴いマントも波打った。ちらりと見えた顔は耳まで真っ赤で、睨むように視線は鋭かった。


……凄い顔。



「どうかした?」


「……何でもない」


「顔赤いけど平気?
もしかして具合悪い?」


「…余計な世話だ」


なんかよくわからないけど怒られた。うんまあ、具合が悪いんじゃないなら良いんだけどさ。

会話も途切れてしまったし、本に戻る。
また暫く本に没頭していると、本館の方からあくまさんがやってきた。


「あ、あくまさんこんにちは」

「ま 読書に励むのは よきことま
ときに、そなたを呼ぶ者ありけり ま」


私を呼んでる人の為にわざわざここまで来てくれたのかあくまさん。というか自分で来てくれればよいのに、誰だろ呼んだ人。

あ……もしかして、


「…レムレスですか?」


「如何にも」


「レムレス何の用かな」


「とりあえず 早く行くこと ま」


「分かりました。わざわざありがとうございましたあくまさん」


ぺこりと礼をすると、あくまさんはにしゃりと歯を剥き出しにして愉しそうに笑う。


「隣人にも 目を向けること 即ち恋ま」

「へ?何です?」


聞き返したのに返事をする気はなかったようで去ってしまった。
あくまさんって言うことが予言チックで分かりづらいんだよな…。何が言いたかったんだろう。
まあとりあえずは先ずレムレスに会ってからだな。
読みかけの本の頁数を覚えて閉じ、あやクルに向き直る。


「さっきあくまさんが言ってたけど、レムレスが呼んでるみたいだから失礼するね」


「…何故」


「多分お菓子あげるとかだろうけど…
呼んでるなら行ってあげないとかなって」

「…じゃあさっさと行け邪魔だ。お前なんてさっさとあの甘党と出かければいい!
ここに居るよりはさぞかし楽しめるだろうな!」


あやクルはキッと睨み、叫ぶように言い切るとぷいと背を向けた。ふるりとマントが弧を描き背に続く。



「…お前なんて嫌いだ」


ふうと息を吐く。
ごめんレムレス。また今度出来たら会いに行かせてもらうよ。


「…行くのやーめた」


「…今更何を言っている」


宣言すると、もそもそとこちらを見るあやクル。


「なんか凄く寂しそうな人がいるから、今日はもうずっとここにいることにしたんだよ」


「だっ、誰が寂しいだと!?
別にこの程度は馴れている!
お前が居るからどうこうするわけ…!!」


「さて続き読もうかな」


「話を聞け!」


口はへの字に曲がり、眉は歪み、背中からは怪しげなオーラを出しつつある彼を苺みたいだなんて思ったのは何故だったんだろう。

顔が真っ赤でぽこぽこ湯気をたてながら怒ってたからじゃないんだろうなってちょっと思った。





2012/07/19
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相互記念作品:ジキルさんへ!

ツンデレあやクルさんとのリクエストでしたが…どうでしょうか^^;
ツンツンはしていますがデレませんでしたね!ツンデレ書くの難しいです…!あとやたら子供っぽくなってしまった気がします…何故だ!


リクエストありがとうございました!拙作ですが、贈ります。
書き直し受付、お待ち帰りはジキルさんのみとさせて頂きます!
 
 
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