「…はあ」
頭が痛いよ。
好意を寄せていたクラスメイトが気が付いたら憧れの先輩の虜になってるなんてさ。
「深い溜息だね。そういや、溜息つくと幸せ逃げるっていうよね」
「半分以上キミのせいなんだけどそういう事を空気を読まず言えちゃうキミは凄いね」
「あはは」
「誉めてないぞ」
ちらりと棚に仕舞われている月刊クロマージュに目をやる。
あれは確かレムレスのインタビューが掲載されてる物だ。
「クルークさ、さっきの話で思い当たるような奴が居たら教えてくれないかな?
少しでいいし、独断と偏見な感じでいいからさ」
「…ん?」
アレ、何だって?
「話聞いてた?さっきの話で該当するような奴が居たら教えて欲しいって言ったんだよ」
まてよ、って事は。
「ナマエ、その人が誰か分からないの?」
砂糖中毒である程の超絶な甘党、そして小さい子をなだめるようなゆっくりとした独特の喋り方。
そして言いづらいけど、普通にしてても溢れ出す怪しい雰囲気。
これだけ特定出来るような材料があって分からないとなると、まさかナマエは、
レムレスを知らないのか?
「…くくくくっ…ふふふふっ…」
「ちょっ…クルークさん?
いきなり笑いだして滅茶苦茶怖いんですがけど…しかも何その凄い怪しい笑い方」
しかも最終的に笑ってるじゃないか!笑わないって言ったのに、とかなんとか後ろでナマエが言ってるけどそれも気にならない程に僕は有頂天になっていた。
ナマエはレムレスを知らない。
という事はここで諦めるにはまだ早いってことだね。僕にまだ勝ち目はあるってわけだ。
「うひひひ、……ナマエ、僕うひゃひゃひゃ、げほげほ、…キミが会った奴がどんな奴か分かるよ」
「笑うか馬鹿にするか話すかどれか一つにしたらどうかな。てかいつまで笑ってるんだよ」
「えーこほん、キミは昨日帰りに近道として森を通った訳だ!」
「まるで推理するように言ってるけど私さっきそれ言ったからね。全然格好良くないからね」
「いいから聞いてろよ。
あそこの森には獣や魔物が少なからず住んでる。」
「うんうん」
「その中には超絶に甘い物がスキな魔物も居るんだよ」
「ふむふむ」
「ようするにナマエ、キミが昨日出会ったのはヒトじゃなくて魔物だったのさ!」
「え…まじでか」
「ああ本当さ!」
「ど、どんな魔物なの?」
「2メートルくらいの大きさで身体が赤と黄色のマーブル模様みたいな感じで、目は3つ、頭にくるくるに曲がった角、んで尻尾は4つ生えた魔物だよ」
「…………」
ナマエがレムレスを知らないなら昨日出会ったのをレムレスでないことにしちゃえばいい!
しかもびっくりして 残念な気持ちになるようにヒトじゃない魔物であるようにするのさ!
これでナマエは幻滅してこの事を自然と忘れるハズさ!
短時間でこんな事思いつくなんて僕ってやっぱり天才だね!
「なにそれ格好いい」
「は?」
「そんな魔物居るのか……世界は広いね」
前言撤回。
ナマエを手に入れるのは相当難解かもしれない。
*20111002
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