「ねえ!これ大丈夫なの?!大丈夫なの!?」
「大丈夫だよ!ナマエが落ちるようなピンチに陥った時こそナマエの恋人は来てくれるはずだからね!」
「全然大丈夫じゃなかった!!
大丈夫要素ゼロだった!ていうか恋人でもピンチだったら助けてくれるような関係でもないからね!」
思春期女子よろしく恋バナ(だがしかし1人で)を頬を染めつつ続行しているアミティととにかく必死にアミティとコンタクトを取ろうと叫ぶ私には凄い距離がある。高さの方で。
状況はといえば木に吊り下げられぷらんぷらんと情けなく風に揺られていた。
どうしてこうなったの一言である。
シグが虫を追って去った後に教室からまいたはずのアミティと出会ってしまってからの、相手に一言も譲らないマシンガントークの開始、よくわからない内に頷いていたらこうなっていた。
ロマンティックな世界の話のよろしく私がピンチになればその魔物が助けに来てくれると言うくだりからの吊り下げ。
もうどうしてこうなったのかも分からないのだからどうすればよいのかも分からない。アミティさんとのコンタクトの取り方も分からない。
「恋人のピンチに駆けつけるなんてステキだよね!」
「アミティさん!話!話聞こう!言葉のキャッチボール!」
騒がしさのせいでただでさえ少ない周りのおにおんやどんぐりガエルは隠れてしまい私たち以外の音が聞こえない。
そんな森からガサガサと足音。
「なに…してるんだいキミたち…」
「あ、クルーク!」
「くくく、クルーク!」
高さと涙目のせいですぐ視認出来なかったけど、声で分かった。クルークが、あのクルークが珍しく森に来た…!今ではいつもの級友さえ神様に見える…!
「アミティ、なに興奮してるんだい……ってナマエ!?
何してるんだ?!」
「何してるんだって言われると困るけど、あえて言うなら乱暴な方法の魔物探し?」
「っ!?ま、魔物………」
「どうしたの?クルーク?」
アミティが首を傾げるように、此方から顔を視認こそ出来ないもののクルークの反応が何処かヘンだった。何て言ったらいいか分からないけど何処かが。
すぐに顔を此方に向けて声をあげるクルークはさっきのヘンな感じもなくて普通の心配してくれている顔だった。
「…とりあえず、そこから降りろよ!危ないだろ!」
「うん、そうなんだけどね、自分じゃあ降りられないんだよね……吊り下げられてるから」
「あ、そうだったね!忘れてたや」
「まったくキミってやつは…しょうがない。アミティ、2人で降ろそう」
「う、うん!」
ゆっくりゆっくりと吊り下げた縄を引っ張って高さを緩くしていく。
だんだんと馴染みの高さに近づいてきてほっと息をついた。
ぎちり、ぎちりと鳴る音は降ろすときの軋む音。
そう認識していたけど違ったようで、ぶちぶちり嫌な音がして、
縄が切れた。
「きゃ、きゃー!ナマエ!?」
「ナマエッッ?!」
縄の悲鳴と共に落ちると分かった瞼はぎゅっと閉じていた。
どうしょう 頭が、真っ白だ、
「アミティ、クルークごめんねぇ、ちょっと頭の上を失礼するよ」
「え?」
「っ?!」
さっき縄を揺らした風のように素早く通った風のような何かは私をしっかりと抱き留めて空中で止まった。
恐る恐る目を開けると緑、が目に入った。
煩い心臓で生きていると確信して少し頭が整理出来た次に感じたのは甘ったるいお菓子の匂いだった。
あれ、これ、どこかで。
*2012/02/25
*2012/04/15 ちょっと修正
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