だいたい10歳くらい歳差があって、私が幼稚園児くらいの時にお兄さんは中学生くらいだった。確かにちょっとその頃から性格はいいほうじゃなかったと思うけど、優しかった。私が分からないといえば分かるまで教えてくれたし、大抵背丈に差のある私の為に腰を下げてくれた。
ぶきっちょなだけで本質は優しくて可愛い人だったのだ。そのときの私はそれはもうお兄さんが大好きで大好きで堪らなくて、遊びに誘ってくれるくれない以前に眼前に入れば飛びつくくらいには大好きだった。手を繋いでくれるのも、ままごととかお菓子とか、子供扱いばかりしないで本を読んだり語ってくれるのも好きだった。

いつか前に子供の私たちの中でさえそのワンフレーズを知るほどに流行った物語があった。それは恋物語で告白の台詞こそ流行語みたいになっていた。大好きで大好きで堪らない人がいる私にとっては馬鹿のひとつ覚えで使ったのだ、お兄さんに。
これは、忘れてしまった思い出も多々ある中でハッキリと覚えている。

「お兄さん、好きです、どうしょうもないくらい好きなんです」

「それ、あれだよな」

「いまみんなが好きなあのお話です」

「ナマエも好きなの?」

「うん、好き。でもクルークお兄さんの方がもっと好きです」

「はは…困ったな」

「…だめですか?」

「ううん、嬉しいよ。でも人の言葉を借りて大切なことを言うのは格好悪いかなぁって。子供みたいだ」

「ナマエはこどもじゃないです」

「だろ?じゃあちゃんと自分の言葉で好きって伝えられるようになった時まだ僕のこと好きだったらまた言えばいいよ」

そうしたら考えてあげる、としゃがんで目線を合わせてから頭を撫でてくれた。
大好きで大好きでしょうがなかったのは世界が狭かったあの頃も今も同じで正直今お兄さんに会ってそう言っても嘘にならないと思う。



だがしかしそれは今お兄さんが昔のお兄さんのまま、であったらの話だ。


「また妄想に耽っているのかい?事実その年頃で妄想ってそろそろやばいんじゃないの?」


きた。
きたよ。

これ、この人はさっきまで散々褒め称えていたお兄さん(過去形)のクルーク(現在進行形)だ。私がいま十代後半なので二十代後半くらい。社会人。
優しかったお兄さんは社会の荒波に揉まれたのかはたまた何年かの会わない内、お兄さんの青春時代に何かあったのかまたは別の何かか。優しくて真摯なお兄さんは消滅、悪くてにやにや意地悪いクルークが残った。何でやねん。

クルークはといえば久々に会ったときの私のときめきなど沸き立つ内なるなにかを全てクラッシュする以上にめっためたにした。すっごい陰険眼鏡になってた。あの頃から確かに子供はあまり得意じゃなくて煩い子は嫌いだったけど今は全体的に子供が嫌いになった。目の敵とかみたいな目で見るんだぜこの大人。
もうお兄さんは過去の人。もうこの大人をお兄さんなんて呼ばないと決めた。だからクルークと呼ぶ。


「また過去の僕かい。毎度毎度よくやるよ。そんなに僕が好きかい?」

「大嫌いだよ、クルークおじちゃん」

「なっ……!!おじちゃん…!!?まだ二十代だぞ僕は!!」

「私から見たらおじちゃんだけどね。陰険眼鏡」

「…キミは僕ばかり変わったみたいに言うけどな、まったくキミだって可愛げがなくなったぞ数年で何があったよ」

「クルークこそ曲がりようが酷いと思うよ私は」


はあああああ、とうざったくかつわざとらしくため息をつくクルーク。こっちがため息をつきたい。シグさんとかアミティさんとかは素敵な大人なのに何でこの人はこどもっぽくなってるんだろうか。しかも可愛げのない。






あれ、(一応)私の初恋なんです。



2012/09/22

子供の頃は大人っぽいのに大人になった途端子供みたいになるクルークいいかなって思ったけどただの仁岡先生な罠。

仁岡先生と川崎ぱろってことでいいやもう


 
 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -