つい先日入学したばかりな気がしたけれどそんなことはなく、もうすでに一年経って私は中学2年生になった。
新クラスに友達はいなくて、このクラスで新しく友達を作るとなるとちょっとばかし憂鬱だった。

このクラスといえば特にヘンな人もいなければ不良みたいな怖い人もギャルみたいな人もいない至ってフツー、少しばかり無個性さが目立つような感じだったと思う。

新人っぽい先生がフレッシュさをきらきらさせて一年間宜しくと声を掛け、新たに書類整理や配布物に追われ、今日この日の学級活動は幕を閉じた。
鞄に荷物をしまい、教室を出る。


こうして今日の学校生活は終わるはずだった。もっと言うなら私の穏やかな学校生活はこのまま何の面白味もなく続いていくはずだった。

だけども今日のこの時間の話はまだまだ終わらずに、そしてここからつまらなくてありきたりな学校生活が終わったのだ。

とある一人の少年によって。





何も言わずに教室から出、帰路につくべく靴箱に向かおうとしていた私を止めたのは、厚く前髪で両目を覆った男の子だった。
両目を髪で覆い隠すなんてどんな暗い子かと思ったけど、その子はぜんぜん明るくやあ、名字ちゃんとにこりと口端を緩めた。

確か理科部だったか科学部か何かの部員の佐々木くんだったっけ。外見はなかなかに印象的、そして個性的(だって肩に剣玉提げてるし!)だけど特に新クラスで気にならなかったのはやっぱり特にはヘンではないからかな。

そんなことをのんびり考えつつも、私は何か用かな?と問うと佐々木くんはうんうん、キミに用なんだよと何故か握手をした。



「佐々木くん、私に何の用なのかな?」


「ちょっと来て欲しいところがあるんだ★」


星を飛ばすように語尾をどこか不思議に上げて佐々木くんは笑った。
握手をした手は依然離す気がないのか離さずに繋がれたまま、である。


「えっと、ごめんちょっと待って」


出入りする人の境目であるドアの前でずっと手を繋ぎっぱなしなので、刺さる視線が痛い。
そういう意味合いでちょっと待って欲しかったのだけど佐々木くんはそう受け取らなかったようで更に手を握りしめた。



「うーん、拒否権はないんだ★」

「えっと、そういう意味じゃ…」

佐々木くんは聞く気も受け取り方を変える気もないらしく、くるりと一回転、私に背を向けとても良い姿勢で…


「よし、じゃあまあ、レッツゴー!」


「ええええ、ちょっと佐々木くんー!?」


握手…よりもどちらかと言えば小さい子の手を引くように繋いだ手を引っ張り、佐々木くんはいきなり全力ダッシュをしたのだ。

拒否権なしの言葉の如く離す気のない手は堅く強く握られているので私はただただ引きずられていくだけだった。


そしてえええ、とかうわぁぁぁとか佐々木くんストップゥゥ!とか叫ぶ私に佐々木くんは佐々木まぐろ、まぐろだよ、とにかっと白い歯を見せた。


そうして引っ張られつれてこられたその先は一つの部活の活動場所だった。





2012/04/25
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仕方ないけど初回なのでまぐろくんにヘンなこと言わせてないことにギリィ……!
はやくまぐろくんにヘンなこと言わせたいです!

 
 
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