左右とお弁当
授業の終わった開放感と家それぞれの料理の柔らかい匂いで授業で張っていたものもほぐれていく。大きく開け放った窓からは青空、爽やかな風がカーテンを揺らした。
みんな大好き昼休みだ!
お弁当だ!運動だ!自由時間だ!
「…だからさ、自分の席で食べなくてもいいんじゃない?
ほら!空凄く綺麗!屋上なんて素敵なのではないかい!」
「まあもう食べ始めちゃったんだし今日はここでいいんじゃない?
それに最近雨降ってないから空は綺麗でも風は埃っぽいぞ」
「クルークと同意見なのは腹立たしいですが右に同じですわ。
外で食べるのは落ち着かないですし、まだ編成されたばかりなのですからせっかくですしこのクラスで食べるのがいいと思いますの」
いつもの席でいつも通りに私を挟みつつお弁当。
いやいやお弁当くらいべったりしないでいいんじゃないかと思い提案…というか勧めたんだけどね。
なんか私が春の陽気にはしゃいでる人みたいになったよ!なんで別にしたいわけでもない提案をして振られて残念な気分になってるんだ。
まあお弁当くらい(口に含んでるからね!)静かにしてくれるみたいだからいいけどさ。
「で、ナマエはお弁当食べないの?」
「そういえばそうですね、ナマエさんのお弁当ってどんな感じなのか気になりますわ」
「うーん?そんな面白いものでもないと思うけどなー」
がさがさと店のロゴ付きの紙袋を開ければカップに入ったサラダ。凍るか凍らないかのちょうどいい温度で冷凍魔導のかかったそれは美味しそうだ。
…と思ったのだけどクルークとラフィーナはしかめっ面だった。
「…え、まさかこれだけが昼ご飯だなんて言わないよな?」
「確かに美味しいでしょうけど体力的にも健康的にもどうですの?それ」
「まあ今日は朝起きるのが遅くてそれしか注文出来なかったんだよね」
私の家は、お弁当を作らないので店でいつも買ってる。
今日はいつもより遅く店に飛び込んだので朝の販売も終わりかけた店にて残っていたのはサラダのみだった。不可抗力だ。致し方ない。
「うーんいつもだったら菓子パンとか買うんだけどね」
「…それも駄目だと思いますけど…レムレスじゃないんですから」
「まったくもう。しょうがないなぁ…ほら、僕のサンドイッチをあげるよ。ちょっと多めだからね」
「あ、ありがとう!クルーク、美味しいよ」
柔らかいそれをそっと受け取って一口頬張った。
クルークらしく、さっぱりとした卵とハムと野菜のサンドイッチは久し振りのちゃんとしたお昼ご飯。それだけじゃなくて、クルークの家の優しい味がした。
もぐもぐと咀嚼する私の横で、クルークはにやあと悪い顔で笑った。勿論ラフィーナに。
「そっか、やっぱり僕の家のサンドイッチは美味しいよね。
ナマエの口には僕 の サンドイッチ が合うんだね !」
にやにやするクルークにラフィーナはみるみる顔が赤くなっていく。
あ、嫌な予感。
「!!
ナマエさん、私のもどうぞお食べ下さい!うちのシェフの自慢の味ですわ!」
ラフィーナはまだクルークのサンドイッチが残る私の口に甘い香りのするサンドイッチを押し込んだ。
「もっ、まら口に入って……!もぎょぎょもぐぐ…」
おっ、おおう……美味しい、けど…卵ハムと甘いのが混じって…てかその前に喉につまっ……
「どうです?ナマエさんの好きそうなデザートチックなジャムを挟んだものにしたんですの」
「ふーん、案外対したことないんじゃない?サンドイッチって普通じゃないか」
「何を言いますの?見た目は庶民的でも素材は高級ですのよ!
それにあなたこそサンドイッチなんて女々しいんじゃなくって?」
「うるさいな!片手で食べれて便利なんだよ。キミと違って僕は忙しいんだ。
サンドイッチは勉強しながらとか読書しながらとかでも食べれるからね」
「あら、そうですか。そんなに忙しいなら今度から1人で勉強しながら食べればいいと思いますわ。
私はナマエさんと食べますから。ねえ?ナマエさ……キャー!ナマエさん?!」
「うわああ!!ナマエが倒れたぁぁぁ!!」
ていうか2人ともサンドイッチってやっぱり仲、良いじゃ…ん…がくっ。
*2012/03/13
手が汚れない(←大事)、甘いのも惣菜系もOKという面でラフィーナ、食べながらでも何か出来るという面でクルークとサンドイッチは両者に合ってると思い被せてみました^^
それにタイトルだしね!どや
しっかしまあ宣言した通り夢主が不憫。2話連続でぶっ倒れてますね。
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