源田と年上のお姉さん


一息ついて制服の襟を直した。
佐久間は鬼道とまだ戦略を練っているらしく学校から出てきておらず自分1人で帰路をについていた。

ただ無心で歩いて行くと曲がり角、懐かしい顔に出会った。


「あ、」


「おっ、おっす!やあ久し振りだね源田く」


しかし曲がり角、無心で早足だった俺とはあやうくで収まらず思いっきり衝突してしまった。

「っん!!」


「うっ…!」


出会い頭の衝突事故はナマエさんがぼすんと俺の胸に飛び込む形で止まった。
最悪といえば最悪だが再会出来たのは嬉しくは思う。
それに、彼女は変わらない顔で笑うんだからかなわない。


「おっとっと…失礼したね源田くん。
大きくなったね、もう私を越しちゃったか」


屈託のない笑顔を見せるこの人は俺の先輩であり、幼なじみであり、想い人であるナマエ…さんである。





近所のちょっと年の離れた友達であったのはいつ頃までだったか、覚えてはいないほど俺の懸想は長い。

「ほい、前に源田くんが好きって言ってたスポーツドリンク。
見たところ部活後だよね?お疲れさま」


「あ、ありがとう…」


手渡されたスポーツドリンクは確かに俺が昔好きだと言った銘柄だった。
といっても確かナマエがすきならおれも!という単純な考えだったことを思い出して恥ずかしかった。

「帝国学園ってことはサッカー続けてるみたいだね。
どう?楽しくやれてるかい?」

「はい、佐久間と新しい仲間とで…」


「佐久間くんも一緒なんだね。やっぱり君たち仲良いね」


「悪友ですよ。
…ナマエさんはどうです?」

「源田くんも中学生だものね…そうだね」


「え?」


ナマエさんは苦笑しながら自分用に買ったらしいミネラルウォーターを開けた。プシュリといい音が鳴る。


「大人だね、源田くん。
あんなに小さくてナマエナマエ可愛かった源田くんももう中学生だもんね。でもさん付けは寂しいなあ」


「うっ」


そう言われても…正面切って女子の名前を呼ぶのは、辛いものがある。如何せん恥ずかしいのだ。


「思い出すなあ…佐久間くんに牛乳買ってこいってパシらされてた源田くん」


「…忘れて下さい」


クスクス思い出しては笑うナマエさんはとても楽しそうだ。


「で、なんだっけ?
私の近況かな?」


「上手くいってますか?」


「君らが期待するような答えはないかな…」


「え?」


「ほら、思春期の源田くんとかが喜びそうなそういうのは残念ながらまったくないよ。
色恋沙汰皆無ってかんじかな」

軽くあははと笑って飛ばす様子にやはり俺は安堵していた。

そしてこれは好機でもある筈なのだ。いきなり核心に迫らずともアプローチをかけるには問題はない。
俺だってもう、恋をするだけの成長もしたんだから。もう甘えん坊の、可愛い小学生ではないのだから。


「源田くんはどうだい?
さぞモテるでしょ?サッカー部で長身でイケメンって女子の注目の的でしょ?」


「そんなことは…」


気にしたこともなかった。
というかなんだかんだで武力行使が大きいサッカー部は敬遠されがちであまり女子は寄らない気がする。


「好きな人くらいいるでしょ?どうだい?」


ナマエさんはきっと可愛い後輩の話を聞いているだけつもりなのだろうな。


「…います」


目の前に。


「どんな子どんな子?
源田くんどんな子がタイプなのか気になるね」

ぐっと拳に力を込めて。
試合と同じくらい緊張して身体ががちがちだ。



「俺、」


「うん?」






やっぱり、まだ、足りないのか、



「…良ければ次の試合見に来てくれませんか?」


「おおー!良いなら見に行かせてもらおうかな!」


その時に試合に勝ったら、みたいな駆け引きが出来たら良いのになんて他人ごとのようにぼんやりと思うのだった。

日時をメモするから、と預けたままに帰ってしまったから俺の手には持ち主において行かれたミネラルウォーターがいた。


たぷりたぷりと音を立てゆれるそれはまだまだ小さい俺を映していた。




2012/06/18
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前に薔子さま宅で語たらせていただいた「源田くんに飲み物おごりたい」的な話です。


詰めすぎて最終的にぐだぐだになってしまった…
源田すきです

 
 
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