こほ、こほんと乾いた咳を漏らしながらも笑みを絶やさない奴を見て感心もしたが呆れもした。


「馬鹿は風邪を引かないとよく言うが風邪をこじらせるまで気付かない、の説の方が有力のようだな」


「大丈夫、朝よりは熱は下がったからさ」


ひらひらと手を振り大丈夫大丈夫と言うが大丈夫と言える要素は一つも見つけられない。


「薬は飲んだのか?」


「うん、飲んでないや。
自然治癒力に任せたい派なんだ私は」


「…薬を飲みたくないだけだろう」

ありゃ?バレちゃったかー、なんてふざける口もいつもより元気はなく掠れ、逆にこちらが気を使う。


「あと起き上がるのがちょっとばかし辛くてね。
薬を飲むには起き上がって気道をきちんとした向きにしてから飲まなきゃいけないでしょ?それが辛くてさ」


まったく仕様のない奴だ。


枕元に置いてあった薬と水を口に含み、そのままナマエの口と合わせ流し込んだ。

ナマエは目を見開いた後、恥ずかしげにそっぽを向く。

「……けほ、こほん…
なにするんだよ…風邪うつるよ」


「うつったらまた同じことをお前にやらせるから問題ない」

心配させた仕返しだ。

そっぽを向いた横顔に手を添えこちらへ向かせ、もう片方の手で顔を固定し、ゆっくりと口付けをした。

そして間抜けに半開きだった口に侵入し、強引にナマエの舌と自身の舌を絡ませた。
ぴちゃぴちゃとわざとらしく音をたててやればナマエの顔がいっそう赤く染まった。

漏れる声も、ナマエのと混ざり合って甘く感じてしまう唾液もすべて愛しい。

とん、と弱く胸を押す手。
酸素を求め苦しげに歪む顔を見て惜しくも合わせた唇を離した。

ナマエは肩で息をしつつ、此方を睨みつける。そんなことをしても相手を喜ばせるだけと気付かないのだろうか。
加虐心が押さえられず口角がつり上がる。


組み敷いて指を絡めベッドに縫い付けた。
まだ抵抗する指を強く握り締める。


「人の発熱は上がりきったら発汗と一緒に下がるものだと聞く。ならばやることはひとつだな」


「……っ!馬鹿っ…」


「何とでも言え」



赤みを帯びる頬や潤む瞳に、惹かれたとは言わない。
あくまで仕返しだ。





*2011’12/24
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匿名さまへ捧げます!

うーん、あやクルさんは難しいですね。
なかなかあやクルさんで、あはんうふんなのが浮かばずベタな風邪ネタにしてみました。

拙いものですが捧げます。
リクエストありがとうございました!





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