狼がよく通ると言われ、薄暗い。如何にも、な森を通るおつかいをさせるお母さん。
最初に言わせてもらおう、どんな親だよ。


     * * *

「うわぁ、もうやだな帰りたい。いや、もはやあんな親がいる家なんてもう帰りたくない」


私は所謂赤い頭巾を被った女の子、ナンセンスな呼び方で呼べば赤頭巾ちゃん。
なんて安直。桃から生まれた少年並みに安直である。
今は森の出口にある家に住むおばあちゃんにお届けものをするところ。あらやだありきたり!

さっきまで、青いマイペースなうさぎさんが隣に居たのに気がつくと居なくてまた1人。
うさぎさんは狼に気をつけろ、なんて物騒な言葉を残しちょうちょを追い掛けていった。
なんてマイペース。

、とここで気配を感じる。

「………っ!」


がさがさ、っと大きな音が後ろから。ま、さ、か。



「狼!?」


「いいえ、りすくまです」


「まさかの熊?!」


「いいえ、りすくまです」


りすくまって言ったって、熊成分多くないかな。
いやいやそこじゃなく!


「…女の子を食べたりしませんよね」

「食べませんよ」


「ならいいや」


「これは驚いた、なかなか落ち着きのある方だ」


「うーん、この森の前の家で住んでいるとなかなかキャラの濃い動物とか人と会うので危害がないならそれ位気にしませんよ」

青いうさぎを追いかけ回す赤いうさぎさんとか、緑のお菓子屋に懐く黒い猫とかうひゃひゃひゃ笑いの男の子とか。


「ふむ」


「そういえばつかぬ事をお伺いしますが、ここら辺で狼出てませんよね?」

とりあえず安全確認、安全確認。
このりすくまさん(?)がいれば大丈夫な気がするけど。


「ああ、まぐろくんのことか」

「まぐろくん?サカナ?」


「いや、まぐろという名の狼くんだよ」


「めんどくさっ!?」

犬科の動物に魚類の名前をつけるなよ。

「多分まぐろくんならりんごくんとピクニックに出かけたよ」

「りすくまさんの周りには名前が美味しそうな子が2人も居るんですね」


「楽しい仲間だよ」


「…楽しそうだなぁ」


「その様子をみるとおつかいのようだな。また来なさい。
そしたら喜んでまぐろくんたちと迎えよう」


「…ありがとうございます」


頭に大きく温かい手がぽふん、と乗せられて何故かすごくくすぐったい気持ちになった。
もしかして、これは、




狼くんは出張中



代わりに優しい森の紳士と出会いました。



*20111203



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