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実力を試す紙との戦い、そして後の恋人たちの休息。


試験が終わって後の課題提出に向けて人波はうごめき始めた。提出に向かう人、今から課題を始める人…様々だ。


私も課題を提出すべく、帰りの支度を整える。試験用紙はきちんと折りたたんでファイルにしまい込んだ。
鞄から課題を出してから鞄を閉じ、机から立ち上がろうとしてようやく目の前でしかめっ面している恋人の姿に気づいた。


「何か用かな?」


「あのさ」


あー、とかうーとかシグみたいな声で苛々しながら後ろに隠した何かを片手で弄くっている。私の机に封印の書とやらは置いているからそれじゃないらしい。

「まさかまさかクルークに限ってそれはないとは思うけど、課題やってないとかじゃな」


「…それ以上言ったら怒るよ?」


「ごめん」


やっぱり苛々している。
なんだろ、テスト明けは出来すぎて困っちゃって愉快過ぎる人種のこの眼鏡くんは何故にこんなに苛々してるんだろ。


「今日何の日か知ってる?」


「ん…テスト最終日とか…じゃないよね」


「それを本気で言ってたら僕はキミを本気で軽蔑するぞ」


「冗談さ。記念日でしょ」


「うん」


そう、今日は嬉し恥ずかし記念日ってやつ。
秀才眼鏡くんと付き合い初めてから、一年。


「ごめん、テストがあったからちゃんと準備出来てない」


「今回準備されてたら今度こそ僕は立つ瀬がなくなる」


ばっ、といきなり何かの箱を取り出した。勢いが良すぎて私の額と激突するところだった。


「ん!」

「ん?」


「こ、れ」


「うん」


「キミにやる!」


「ありがとう」


こそこそとしまおうとしたら、開けないのかよって顔をされたから開けさせて貰うことにした。
歪に結ばれたリボンを引くと中に入っていたのは細い紫色のリボンが目立つブックマークだった。


「キミに合いそうだから」


「ありがとう、大切に使わせてもらうよ。
て、いうか今気になったんだけどクルークって記念日とか気にするタイプだったっけ?」


ブックマークからクルークに視線を上げると顔はいまにも茹で上がりそうな蛸状態だった。

行き場のない手はそわそわと眼鏡を押し上げる。

「1ヶ月記念日のとき今日みたいにちょうどテストだったろ、それなのにキミはちゃんと準備してたから申し訳ないっていうか悔しかったというか、」


「うん」


「ま、まあ、これからも付き合ってあげるよってこと」


「ありがと」


目があっちへこっちへぐるぐると泳いでたり顔が未だに茹で蛸だったり、自信満々な言葉の割にはとても挙動不審。

そんな可愛い恋人の頭をぽすぽすと撫でると裏声になりながら怒られた。
キミをなめてるわけじゃなくて可愛いと思ってるだけなんだけどなあ。ま、言葉に出しはしないでおこう。更に顔が真っ赤になっても困るからね。



「じゃあ一緒に課題出しに行こっか?」


「しょうがないから行ってあげてもいいよ」


二人で頬が緩むそんな放課後の話。

一周年ありがとう。
大好きで可愛いキミと居れることに感謝。




2012/07/19
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あやくる「リア充ばくはつしろ」

よくよく考えたら描写入れるの忘れてたから封印の書机に置きっぱなしだった。


個人的ですがクルークというキャラクターに出会ってだいたい一年の記念に書きました。
まだまだ大好き。


 
 
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