澄んだ空の色と隣で眠そうな顔をしている君の色が実に似ていると見上げてようやく今日の空には雲一つないと気づいた。
もふりとかじりついた菓子パンはチーズかと思って買ったのにまさかのレモン味でちょっとがっかり感。レモン味と知って買ったら普通に美味しいんだろうけど。
隣の彼はやっぱり眠そうに手持ちの不思議な色をしたドリンクを啜った。とても美味しそうには見えないけど大丈夫かな、それ。
「……まずい」
「だよね」
紫色でダサめのキャラクターが印刷されたパッケージのそれは明らかに美味しそうじゃない。
紫つったら紫ぷよが定番なのにしないあたりがまたこう残念。
「そんなの買うなんてシグはチャレンジャーだね」
「メガネから貰った」
「後であの秀才どやす」
さては買ってみて美味しくなかったからシグにあげたなあのウヒャヒャ眼鏡。
ジュース買うお金忘れたからくれたとか絶対良心あってのことじゃないだろ。あとでラフィーナと共同戦線組もう。
「で、なんのはなししてたっけ?」
「タルタル君がまたしてもラフィーナに告ってまたしても振られた話」
「そうだっけ」
「そうだったよ」
また静かに風が流れて髪が揺れ、頬を撫でた。
シグはぴょこぴょことアンテナを動かしつつはてなマークをとばす。
「ナマエってそんなにラフィーナすきだったのか」
「そういうことじゃないよ」
別に私はタルタル君が告ったとかラフィーナが振ったとか別に人の色恋沙汰が気になる訳じゃない。
「そういう話をシグにするのもどうかと思うんだけどね」
「?」
「今の私たちの年代って所謂青春ってやつなんだろうけど恋しなきゃいけないのかな」
シグは眠そうな顔をしつつも返事代わりに瞬きをした。きちんと聞いてはくれている。
「アミティはそういうのに敏感だし、ラフィーナはよく男の子の噂になってるしで周りはなんだかんだいって恋色ってかんじな気がするんだ。
それにしょっちゅう色んな子にナマエは好きな人はいないの?好きな男の子のタイプは?って言われるし。
だけどやっぱりそういうのに興味が湧かないんだよね」
んー、と喉を鳴らすように起きてるか起きてないか分からない声をあげてくれたシグくんはまだ寝てはいないようだ。
「恋に恋するって年代でもないしね。そういうのは初等部のうちにやっておくべきだと思うし。
まあこういうのも青春なのかなって自己完結もしてるんだけどね」
とりあえず聞いてくれてありがと、と笑うとシグもちょっと口元が緩んだ。
そしてシグは私の口元のそれに目を向けた。
「それ美味しい?」
「まあまあ」
「じゃあちょっとちょうだい」
「いいよ」
ふわりと伸びた手に食べかけのレモンパンをのっける。
ぱくりと頬張るシグの眉間は途端に歪んだ。
「…これレモンだ」
「あ、ごめん言うの忘れてた」
「……すっぱい。
とりあえずありがと」
口がきゅっと歪むシグ、ちょっと可愛い。
ゆらゆら揺れた視線がちゃんと定まってこちらを見た。
考えてるみたいな表情をしつつシグは語り出す。
「さっきの恋が、ってはなしナマエは恋をしたいのか」
「そうかもしれないけどでも好きな人とかまだ考えるには達してないんだよね」
「ナマエのことすきなやつがいたら恋、する?」
「それはどうかな、居るのかなそんな人?」
「いる、ここに」
隣で眠気にふわふわしていたクラスメイトくんはどこへ行ったんだろう。
衝撃の言葉が脳へと届く寸前、ただ一瞬に私の眼前は水色で埋まった。とても私のキャラには合わないような可愛いリップ音。そして同じレモン味の口を共有していた。
すっと離れて、ショートしそうな頭の原因はただただ笑っていた。
「こんなにいたのにちょっともきづかないナマエでもこれで恋ってやつになる?」
2012/05/20
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シグくん格好可愛い(結論)
無駄に長い文になるのはシグくんの可愛さ加減を出そうとして四苦八苦したから。